飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「妹様による、俺ルート攻略・ラブコメ理論」感想

妹様による、俺ルート攻略・ラブコメ理論 (GA文庫)

妹様による、俺ルート攻略・ラブコメ理論 (GA文庫)

〈あらすじ〉
「――お兄様。わたしが極めた恋愛理論であなたを攻略してみせます!」
「いや、お前が参考にしてたのってギャルゲーだけじゃねえか!」
アバターを用いた『日常仮想空間』での交遊が流行し始めた現代。
現実で窮屈な高校生活を送っていた景太は憧れの人気アバター【妹姫】枢院アリスの正体が、同じ学校の堅物風紀委員・片瀬透子であることを知ってしまう!
秘密を守りたい透子に迫られて、景太は「相手への絶対命令権」を賭けてネットで『兄と妹の恋愛』というクエスト勝負をすることに!?
男心を知り尽くす(?)恋愛『ゲーム』の天才、枢院アリスによる俺の攻略が始まる。
明月千里×☆画野朗が贈る、恋愛攻略ラブコメディ!

おー『月見月理解の探偵殺人』『眠らない魔王とクロノのセカイ』とは違い随分と取っ付きやすい。
「え?あの明月さんがラブコメ…?」と心配になりましたが杞憂でした。理屈また理屈で攻めてくる明月さんの色をしっかり練りこみながらも読みやすい一冊になっている。

器用ゆえに周囲の期待に応えてしまい、高校生となった今では生徒会副会長の肩書きを持つまでに至った主人公の片倉景太。本当はもっとお気楽な日々を送りたいのに…そう思いながらも、自分の気持ちに正直になれず生徒会での責務を果たしていた。
そんなプレッシャーのかかる生活の中に身を置く景太の逃げ場が、アバターを使用するオンライン『日常仮想空間』LOC。仮想世界に身を委ね、LOC内の美少女アイドル枢院アリスに憧れる安穏とした『日常』を過ごす景太であったが、その生活は脆くも崩れ去る。
ひとつ年下の風紀委員・片瀬透子。融通が聞かず、お堅い風紀委員である透子こそが、アリスである事実を知ってしまったことから一変。同時に景太も弱味を握られたことから、二人は『絶対命令権』を賭け、LOC内で「相手を惚れさせた方が勝ち」というクエストを開始する。

客観的に見て充実した日々を送っているように思える景太の中で燻る想い。その想いを解消する場である仮想世界が蹂躙されようとしているのだから、そりゃあ必死になって抵抗しますわ。
景太の『日常』を壊そうとする本人・アリスこと透子は、ため息を吐きたくなるほど残念な娘。完全にエロゲ脳です。本当にありがとうございます。景太の口を封じるため、吹っかけた『恋愛勝負』にエロゲで培った知識を実践する透子は実に駄目な娘であります。しかしあざとい透子の言動にまんまと引っかかる景太のチョロさもまた残念極まりない。とはいっても男の子だから仕方ないよね、と思う場面も。
何にしてもこの『恋愛勝負』、設定が『兄妹』というところからして景太に不利。この設定に持ち込んだ透子が策士と言うべきか。エロゲまたはラブコメ作品にありがちなシチュエーションの中で、透子の策略に嵌り手玉に取られる景太の情けさなが目立つ前半戦であったが、後半は一気に盛り返す。リアルの日常が嫌で仮想の『日常』に逃げ込んだというのに、仮想世界でもリアルと同じ日常を送っては意味がない。言っていることは最もな感じなんだけど、吹っ切れるキッカケとしてはどうにも納得できん(笑)
素直に(仮想世界を)生きることを決めた景太の妹攻略は実にスムーズに進む。頑ななリアルでの透子にも接して、フラグを建築する抜かりのなさ。いつの間にか逆転してる。最終的に景太が勝利を掴むが、ある意味でこの『恋愛勝負』に勝ち負けはないな。

いや、この『恋愛勝負』に負けたのは僕たち読者なのかもしれない。最後の最後になってサラッと明かされる真実。ここまでの流れ全てが振りだったんですね、どう考えて身これからが本番じゃん!してやられたわ!!続き読ませてえ!!!