飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「甘城ブリリアントパーク1」感想

甘城ブリリアントパーク1 (角川ファンタジア文庫)

甘城ブリリアントパーク1 (角川ファンタジア文庫)

〈あらすじ〉
「唐突だけど……可児江くん。わたしと遊園地に行かない?」謎の美少女転校生・千斗いすずが、可児江西也を放課後の教室でデートに誘ってきた。
転校初日から校内で噂になるほどの女の子に誘われるというのは、悪くない構図だ。
ただし――、こめかみにマスケット銃を突きつけられてなければ、の話だが。
しぶしぶ承知して向かった先は「甘城ブリリアントパーク」。
ダメなデートスポットの代名詞として名高い遊園地だ。
そこで西也はラティファという“本物の”お姫様に引き合わされる。
彼女曰く「あなたにこの『甘城ブリリアントパーク』の支配人になって欲しいのです」……って、なんで俺が!?

富士見ファンタジア文庫に賀東さんが帰ってきたよぉ!キャッキャ!
シリアス展開のままフルメタが大団円を迎えたこともあって、賀東さんのコミカルなお話は久しぶりだ。そして締めるところではしっかり締める、このシリアスとコミカルの配分が非常に良くていつの間にか読み終えていた。

『開幕〈グランドオープン〉!』とは良くいったもので、この一冊を通して物語の始まりを上手く描き切っている。
顔立ちも良く成績優秀の『天才』なのだが、性格が災いして孤独を味わう高校生・可児江西也。そんな彼にマスケット銃を突きつけデートに誘う美少女転校生・千斗いすず。いすずの手引きによってデート先に選ばれたのは、テーマパーク『甘城ブリリアントパーク』だった。誰の目にも寂れている甘ブリは客も少なく、働く側にも意欲が見えないダメダメテーマパークだった。
支配人である盲目の美少女・ラティファに引き合わされた可児江は、神託によって甘ブリをこの危機的経営状況から救う存在だと知らされる。更には甘ブリのキャストはラティファ、いすずを含めて『魔法の国』の住人であり、人のワクワクする気持ちを力にして生きているという。
訳の分からない事態に断る可児江であったが、ラティファの想いを知り、掘り起こされたキャストたちの意欲を感じて『甘城ブリリアントパーク』再生へと乗り出す。

あまりにも唐突な幕開け。なのにぐっと物語に引き寄せられるのは、賀東さんならこの後何か仕掛けてくるだろうという安心感があるからだ。
『甘城ブリリアントパーク』で働いている者たちは、大半が魔法の国の住人であり、見た目はファンシーな着ぐるみたち。若干一体ほど何処かで見たことがあるように思えるのだが、気のせいに違いない。ふもっふ。
閉園回避のため、たった二週間で入場者数10万人を越えなくてはならない無理難題を突きつけられるのだが、そもそも可児江には無関係な話。支配人の話を受ける訳もない…と一度は背を向けたものの、ラティファの健気な想いに考えを変えて戻ってくる可児江くんは実にいい奴ですね。なかなか言うことを聞かないファンシーな見た目だが中身は下品なオッサンの生きた着ぐるみたちの前で、彼等の負けん気を奮い立たせるためにあえて悪役を演じる強さまである。

指示を下される側としては憎き経営者。しかし可児江の近くで彼の采配に触れている者は彼を認め始める。それは口だけでなく、実際に行動を起こして示すことで得た効果なのだろう。決して明るみに出来ないこともまで実行に移し、奇跡を起こしてみせる。その奇跡の先にあるのは、新たなスタートラインだ。

今回の話全て、読者が『甘城ブリリアントパーク』を好きになるように仕掛けられているのが恐れいる。僕もこのテーマパークとここで働く人々が大好きになっています。
気になるメインヒロインであるが、フルメタ同様二本柱で行くのかしら。気になる。