飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「D9―聖櫃の悪魔操者ー」感想

D9―聖櫃の悪魔操者― (電撃文庫)

〈あらすじ〉
“終末の厄災”より千年――悪魔と魔法と失伝機械群が支配する大陸ファラディース。少年ソーマは、美しき少女悪魔メルヴィーユと契約し、共に世界を旅していた。悪魔を召喚し、故郷を滅ぼした実の兄を探して。
 旅の途中、二人は高名な悪魔学者が住む街デルナに立ち寄る。異国のメイドと、父のような悪魔学者。そこで二人は、街を揺るがす大事件に巻きこまれてしまう。
 悪魔憑きの少年ソーマと、少女悪魔メル。その旅が“世界の命運”を握ることを、二人はまだ知らない――。

何だろう、読み終わった直後にホッとする物語というか…まあ一言でいうと「好きなお話」でした。

悪魔が蔓延る世界。増え続ける悪魔は人々の生活を脅かし、やがては人類を滅ぼすことだろう。悪魔を喚び出し、故郷を滅ぼした兄を追って旅を続ける剣士の少年ソーマ。ソーマの旅に同行するのが、彼と契約した記憶喪失の美少女悪魔メルヴィーユ。ソーマとメルヴィーユ、二人は悪魔学者であるアーチボルト博士の元を訪れ、兄の手掛かりを得ようとするのだが、博士の住む街を震撼させる連続殺人事件に巻き込まれて行くことになる。

仇である兄を追い、旅から旅を続ける剣士ソーマ。奇抜な設定も目を引く展開もないものの、「起承転結」をしっかり押さえた王道ファンタジーは、読者の裏をかこうとする物語が増える中では新鮮に感じる。

ソーマをやたらと慕う悪魔のメルちゃん。下ネタを放ちながらソーマに迫りくるメルには謎が多い…というよりも、記憶喪失のため本人ですら自分自身が謎の存在。他の悪魔の能力をコピーして使う力を行使するメルのバックアップを受け戦うソーマも相当な実力者。その力を手に入れる努力の糧になる「恋心」と「復讐心」について、丁寧に描かれている。それだけにソーマの果たしたいことに同調する。

好みの物語なので、今後の展開に期待したいなあ。とりあえず「打ち切り」にならずちゃんと終わらせて欲しいかな。