飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「リーガル・ファンタジー 1 勇者弾劾裁判」感想

リーガル・ファンタジー 1 勇者弾劾裁判 (ファミ通文庫)

〈あらすじ〉
勇者の功績により聖魔戦争が終結して300年。正義の弁護士を目指す少女フィオナは名門法律事務所の門を叩くも、守銭奴である所長への反感から、事務所を鞍替えすることに。だが、法廷デビュー戦で対するはかつての師スミオ・マリアヘル、その人だった! 彼女は敗れ、結局はスミオの元でこき使われることに……。そんなある日、事務所に持ち込まれた依頼は――アノ勇者の弁護!? 駆け出し弁護士と最強の『法廷の魔女』が挑む裁判ファンタジー、ここに開廷!!

皆さんには贔屓のラノベレーベルがありますか?
毎月これだけ新人がデビューして新作が発売される世の中。ある程度見切りをつけて読まないとならない。ここ最近はファミ通文庫の新作が面白いのもあって、今年もファミ通文庫の新人賞作品は全部読もうかな、と思っています。

正義を貫く弁護士を目指し、憧れの女弁護士が所長を務めるスミオ法律事務所の門を叩いた少女フィオナ。狭き門を突破したフィオナはスミオを師とし、弁護士の道を歩み出す…はずであったが、憧れのスミオは正義どころかお金さえあればどんな人間でも弁護して裁判を勝たせるとんでもない女だった。そんなスミオに愛想を尽かしてスミオ法律事務所を飛び出し、他の事務所に就職したフィオナであったが、法廷でスミオと再会。完膚無きまでに敗北することになる。再びスミオの元に戻ったフィオナは、偉人…人類を救った『勇者』を弁護することになるのだが……。

「ファンタジー世界」+「弁護士」+「女主人公」と聞いて、妙な懐かしさを覚える人は富士見ファンタジア黄金期を生きた読者に違いない。そんな想いは置いておき、さて内容の方へ。

国民的RPGのような世界観ではあるものの、科学もそれなりに進歩している奇妙といえば奇妙な世界。魔族の手から勇者が人類を救ってはいるものの、魔族を打ち倒した訳ではなく、人と魔族、不可侵のような状況のまま300年が経過している、といった感じか。

見習い弁護士のフィオナは「法のもと人は正義を貫くべき」といったモノの考えの主人公であり、悪くいえば人を疑うことを知らない純粋な女の子。弁護士を目指す者でありながら、人を表面だけ見て裏切られたり騙されたりする。そんな彼女を弟子に取り、世知辛い世の中というものを教え込んでいくのがエルフ族にして勝率99パーセントオーバーの凄腕弁護士のスミオ。金、金、金の考えを持ち、事あるごとにフィオナと意見がぶつかるスミオであるが、時勢を読み、言葉巧みに裁判の流れを誘導する様は読んでいて爽快感がある。スミオ一人に任せておいても問題は解決してしまいそうな勢いを感じるが、そこは主人公のフィオナ。ちゃんと見せ場もあります。また『勇者事件』に絡み、意外な展開を見せる終盤は見物。

場面が変わると唐突に展開は動いていて終わっていたり、話が前後したり、ここはしっかり読ませた方が先の展開が分かりやすいのでは…と思う物語の繋ぎ方がチラホラ。この辺りは新人さんとあって、書き続ければ良くなることを期待したいです。