飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「エーテル//ギア 魔術機鋼のオッドガルド」感想

エーテル//ギア 魔術機鋼のオッドガルド (MF文庫J)

〈あらすじ〉
人と魔術師との戦争《大搾取》により魔術師の文明が滅ぼされてから三十年が経った。魔術師たちの残した魔力源《エーテルギア》の存在は人類の文明を飛躍的に進歩させた。企業に雇われて《エーテルギア》を回収することを副業としている高校生、錺矢水最は、後輩の三崎瑠衣に心配されながらも、人が作り上げた最強の兵器《人工魔女》のソラと共に依頼をこなしていくことで生計を立てていた。ある日、水最は取引先のアレクトリア社から、ここ最近で多発しているエーテルギア強奪事件の真相、首謀者の調査を依頼されるが……。人と魔術師、社会の在り方を巡るサイバー叙述詩、開幕!

自分でもおかしな日本語だと承知しているけれど、シロウさんのイラストはラノベ映えするよな、と。一枚の絵に物語を綺麗に敷き詰めて見せてくれる。作品のイメージがダイレクトに伝わってくる素晴らしいイラストだと思います。表紙のソラちゃんかわいいよソラちゃん。

人類が魔術師と争った『大搾取』が、人類側の勝利に終わってから30年。現代科学に魔術師の技術を取り入れた『人工魔術』が発達していた。高校生の錺矢水最は学生をしながら、『人工魔術』を扱う大企業に雇われ、頻発する魔術師のテロ行為に使われる魔術兵器『エーテルギア』を回収する仕事をしていた。魔術仕掛けの感情ある人形『人工魔女』のソラを相棒に事件に挑む水最であったが、エーテルギア強奪に絡む魔術師の犯罪が思わぬ方向へと進んで行くことになる。

現代科学に取り込まれ、人類と共生する新たな魔術のカタチ。人類に負けた魔術師たちは散り散りになりながらも、テロを仕掛けては人々の生活を脅かす。そんな彼らを討ち、企業の利益にするため活動するのが水最のようなある種の傭兵だ。30年前の戦争の遺産である人造人間『人工魔女』ソラを従える水最は、何処か達観したような、年齢不相応の少年。謎の多い水最にベタ惚れのソラは、健気に水最のためその力を振るい、魔術師のテロを粉砕していく。

と、世界観にも設定にも特別目立つものはないけれど、テーマを据えた一本筋の通った展開は非常に追いかけやすく、読んでいて不安になることもなく、最後まで一気に読み干すことができた。事件を追いかけるにつれ、事態の深刻さに気づき、とんでもない闇の一端を覗き見ることになってしまう水最。彼の戦いをサポートするのはソラだけでなく、可愛い高校の後輩ちゃんであり、魔術師事件の沈静化を第一に置く警察側のエキスパートである瑠衣も大活躍。ダブルヒロインという盤石の体制。どちらも真の通った強さを持っていて魅力的だ。

シリーズ展開を推し進めるための伏線も多く、今後の展開も楽しみ。