飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「メサイア・クライベイビィ 〜救世主はよく泣く〜」感想

メサイア・クライベイビィ 〜救世主はよく泣く〜 (スーパーダッシュ文庫)

〈あらすじ〉
人類が重力テクノロジーを発達させ、広大な宇宙に生息圏を広げて数千年。銀河の侵略者「帝国」により滅ぼされた故国奪還を目指す姫君リューン=サデュアルは、一人の少年と出会う。少年の名はヒノ=セレス。後に銀河中で“泣き虫な救世主”(メサイア・クライベイビィ)と呼ばれることになる、人類最強の重力制御能力者だった…! 「あ、あの……ご、ごめんなさい。わらわ、おっぱい押し付けてごめんなさい」「……さては君、馬鹿だろ?」 泣き虫な救世主と巨乳姫君が贈る、超ド級重力バトルスペースオペラ、堂々開幕!!

テッカイオーのキーワードが「童貞」で、この作品のキーワードは「泣き虫」ということで。しかもロボットモノにSF…ブレないな、この人は、と妙な感心をしてしまいました。

人類が宇宙に進出して千年。重力を応用した技術が発展した世界で、その版図を広げる「帝国」に抗う人々がいる。一方、死刑囚が放り込まれる地獄のような場所・死人谷で暮らす少年セレスは、恩師の願いを受け、ある女性を救おうとしていた。帝国から祖国を取り戻すために戦う元お姫様・リューン・サデュアル。囚われの身となったリューンを助け出そうとするセレスに宿る力…それは帝国を統べる『支配侯』を滅ぼすことのできる最強の「重力使い」の力だった。

最強。なのに泣き虫。
暴力と死が日常の場所で生を受け、孤独に成長するセレス。そんな彼の心を救うのは、ある使命を背負った老人。人の温もりを知ったセレスは、重力を操る最強の力を持って、老人の大切な教え子リューンたちを救い出す…のだけれども、そこに最強の力を振るう「格好良さ」はなく、ただただ感情に振り回されながら生きるセレスという少年の心が描かれて行く。セレスにとって孤独から救い上げてくれた老人が、世界の全てだった。そんな老人を亡くしてしまい、悲しみにくれて泣いて、老人が守ろうとした存在に嫉妬して、でもリューンたちはとても優しくて、またセレスは泣いてしまう。とにかく泣っぱなしだ。

「格好良さ」は無いかもしれない。でもそれが「格好悪い」ことではない。セレスの戦い、リューンの戦い、ひたむきに相手を思いながら戦い、恋をする優しい彼等の涙は、人の心に訴えかける力がある。