飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン 5」感想

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (5) (電撃文庫)

〈あらすじ〉
未知なる戦場「海上」で手痛い敗北を喫したイクタたち、カトヴァーナ海賊軍。驚異的な破壊力を誇る「爆砲」を装備するキオカ海軍に対して、もう戦略的撤退しかないと軍議がまとまりそうになったとき、海戦に関しては門外漢のはずの、ある少年が、爆砲艦への有効な対抗策を提言するのだった――。
「肉を切らせて骨を断つ」がごとき、血で血を洗う激烈な海戦が幕を開ける!
コミカライズも決定した、話題の本格派ファンタジー戦記、待望の5巻が登場。戦いは激しさを増すばかり……!

マシューの心理描写は心を抉ってくるな。勿論、良い意味で。挫折を知って、その経験を血肉に変え前に進む人間は芯から強い人間になる。それはマシューだけではなく、彼が「天才」と見るイクタやトルウェイにしてもそうなのだろう。

これまでで、ある意味一番成長のなかったお姫様。シャミーユの心を揺さぶるのは国とか戦争とか大きな出来事ではない。イクタに対する想い。そんなイクタと強い繋がりを持つヤトリへの嫉妬。醜いと感じる感情を抑え込むことができず、悔やむシャミーユであるが、後悔できるのは成長できる証でもある。彼女の成長はこれからだ。

イクタの切り札。
もう後戻りはできない。いや、とっくに出来なくなっている、というのが正しいか。国を割る二つの勢力に争いにどういう小細工をして、詐欺をして、「待った」をかけるのか。イクタだけではない。一緒に成長してきた仲間たちとの絆をも試される物語が始まる。