飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「戦塵の魔弾少女(バレット・ガールズ) 」感想

戦塵の魔弾少女(バレット・ガールズ) (このライトノベルがすごい!文庫)

〈あらすじ〉
 内戦状態の独裁国・バラトルム聖帝国。廃工場に身を寄せ合い生きていた戦災孤児のリッカと仲間たちは、ある日、とある施設へと保護される。しかし、そこは洗脳と身体改造によって人知を超えた能力を有す魔法強化兵を生み出す悪魔の強制収容施設だった。魔法強化兵へと改造された少女たちは独裁者の兵として硝煙弾雨の血みどろの戦場へ送られる。奪われた自由。奪われた心。正義なき戦争の果てに少女の瞳に映る世界とは――! 「魔法強化兵部隊、戦闘開始!」衝撃のハード・バトルが幕を開ける!

桜沢いづみさんはほんわか可愛らしい女の子を描く方、というイメージがあったので表紙と帯の悲劇を予感させるコメントを見た時はどれだけ物語にマッチするのか心配ではありましたが…まあ杞憂でしたね。桜沢さんのイラストだからこそ、悲劇が一層際立つ。

バラトルム聖帝国。ひとりの独裁者によって支配されているこの国では、革命を謳う者たちとの争いが頻繁に起きていた。両親を亡くし、孤児となった少女リッカは同じような境遇の仲間たちと身を寄せ合いながら一日一日を必死に生きていた。ある日、児童福祉局の職員を名乗る女性ロイゼの誘いを受け、孤児たちを保護する施設に入ることになったリッカたちであったが、そこは子供たちを「独裁国家の戦争の道具」に仕立て上げるために作られた場所だった。そうとは知らず、魔法技術によって人体を改造されたリッカたちはバラトルム聖帝国に逆らうものを処理する魔法強化兵として人を狩り始める。

冒頭から…いや、言ってしまえば表紙の時点で悲劇的な結末が予想される物語なだけに、心構えをして読み出しました。もう…心が痛くて痛くて堪らないね。孤児として共に想い合い、支え合った家族と呼んだ方が正しい仲間たち。少女を兵器に変える悪魔の所業が、彼女たちの絆をより一層強くするものであり、だからこそその絆が強引に引き裂かれた時の悲劇がとても辛い。

魔法によって強化された肉体を活かし、「敵」に銃弾を叩き込み、死へと導く。まるで作業のように淡々と殺人をこなす少女たちの姿に戦慄を覚えると共に、それでも彼女たちの心に灯る家族を思う気持ちは一体どういった結末を見せるのか? 救いようのない悲劇か、それとも彼女たちの心は報われるのか……心に「くる」悲劇を味わいたい方は是非。