飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「ザ・ブレイカー 黒き天才、その名は」感想

ザ・ブレイカー 黒き天才、その名は (電撃文庫)

〈あらすじ〉
醜い人面皮をかぶり「恐怖の顔」と名乗る謎の男が、200人以上の学生を人質に高校を占拠する。交渉人として呼ばれたのは、重犯罪特殊刑務所に収監中の、ある少年だった――。
少年の名はカナタ。彼は、100万人の命を奪った毒ガステロに荷担したうえに、64人の刑事を殺害した罪で死刑判決を受けている「悪魔」だった。
人質を殺しながら不自然な要求を突きつけてくる凶悪な籠城犯と、他人の命に価値を見出さない冷酷な悪魔が、手に汗握る知能戦を繰り広げる……!

前作の『ラスト・セイバー』はバトルモノだったけれど、この作品は頭脳戦をメインに据えた物語になっている。今回も面白かった…殺人鬼VS殺人鬼。物語がどう転がっていくのか、ドキドキしながら見守った。

裕福な家庭の子が通う有名進学高校・静峯学園。冬休みを終え、新年初登校のその日…学園はひとりの殺人鬼によって占拠される。人面皮を被り、アサルトライフルで武装したその男は「恐怖の顔」を名乗り、学園の地下に埋め込んだ爆弾で学生たちの命を握ると、ある要求を口にする。5年前、『殺戮の三日間』と呼ばれ、謎の毒ガスによって100万人の命を奪ったテロ。その実行犯のひとりである死刑囚の少年・緋上カナタ。「恐怖の顔」はカナタを交渉役に指名すると、もうひとつの不可解な要求を告げる。こうして殺人鬼と殺人鬼の頭脳戦が始まる。

100万人を殺したテロリストにして死刑囚のカナタ。あらゆる司法取引にも応じず、何事にも興味を示さないカナタが、殺人鬼「恐怖の顔」に挑むことを決意したのは、学園の中で囚われの身となっている妹…緋上リセを助け出すため。一方のリセは兄を憎み、兄のような人間と戦うべく犯罪心理学を学ぶ真っ直ぐ芯の通った少女。二人の異常な関係になってしまった兄妹を軸に、「自分の正体を当てろ」と生徒に問う「恐怖の顔」と対決していく。

人を人とは思わず、無慈悲な死を振り撒く「恐怖の顔」の「真意」に辿り着くためにカナタとリセは思考を巡らせていくのだが、恐怖に踊らされる生徒たちもまた異常な行動に走っていき、なかなか上手くいかない。そんな中でもまたひとり、またひとり人命は失われ、リセは傷付いていくものの、カナタは人の死すらも無感情に利用しているように見える。物語を追いかけていくと、「真意」はひとつだけではなく、この物語には数多くの「真意」があり、全てを解かなければ本当の解決がないことが分かる。カナタの真実、リセの真実、「恐怖の顔」の真実、そして隠された陰謀…その真実。

その全てがクリアになった時、本当の物語の幕開けがある。