飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「大英雄が無職で何が悪い 01 Soul Collector」感想

大英雄が無職で何が悪い 01 Soul Collector (オーバーラップ文庫)

〈あらすじ〉
「俺は大英雄キサラギだ。おまえはツイてる。最後に会ったのが、この俺なんだからな」
〝目覚めよ。〟と言われて目覚めると、そこは見知らぬ世界だった。空に赤い月が輝く「まるでゲームのような」世界グリムガルで生き抜くために、とりあえず俺たちは戦うしかない……が、どうやって?
手始めにオークをぶっ殺しに行った俺たちは、死にかけた冒険者から魔剣「ソウルコレクター」を託される。これさえあれば、戦士だろうが神官だろうが関係ない。「無職」のまま、本当に英雄になってやる。

某所にて連載していたらしい(WEB小説に疎い)この作品。『灰と幻想のグリムガル』と同じ世界・同じ時期に起きていた全く違う義勇兵たちの物語です。

『灰と幻想のグリムガル』のハルヒロたちと同じような状況から物語はスタートする。違うところとすれば、ハルヒロたちが大勢の中で「目覚めた」のに対して、こちら側はたったの三人。根拠のない自信に満ち溢れ、「大英雄」を称する少年キサラギ。そんなキサラギとは対照的に、真っ直ぐな優等生である長身美少女イチカ。天然ぽわぽわ不思議ちゃんのモモヒナ。三人はセオリー通り、ギルドに所属する流れになるのだが、それをぶった切って我が道を進み出すのがキサラギ。ギルドに所属せず、煽られてオークを倒そうとするキサラギ一行だがそう上手くいくはずもない。その最中、キサラギは死に絶えようとしていた冒険者に遭遇し、その冒険者から一振りの剣を託される。魔剣ソウルコレクターは絶大な威力を発揮して見事オークを倒すことに成功する。

ハルヒロたちが一歩一歩、一段一段冒険者として前に進む中、思慮の足らない行動からギルドに所属する金を失い、「無職」のまま絶対に倒せない敵…ハルヒロたちの奮闘を見ていればより強く実感できる…オークに挑もうとする無謀なキサラギ。ある意味ではランタよりもバカだ。実際、魔剣ソウルコレクターを手にする超幸運に恵まれなければ、キサラギも、その仲間たちも間違いなく死んでいた。

何処から湧いてくるのか、枯れることのない自信。キサラギという男の「ぶれない」姿勢はバカであると同時に、ここまでくれば大したものだとも思ってしまう。ソウルコレクターがなければ本当にタダのバカで終わっていただけに…ただただ感心する。ソウルコレクターのもたらした戦闘力によって、本来ではありえない戦果を上げ、初心者とは思えない高度な魔法等を取得するイチカとモモヒナであるが、常識人のイチカはやはり身の丈に合わない成長に戸惑っている。これが普通の感覚。キサラギにプラスして何も考えていないモモヒナの中にいると絶対これ不安になるよね?

ドンドン前進していくキサラギ一行。彼等は…いや、彼は本当に「大英雄」になれるのか。なれちゃいそうだから怖いよ(笑)