飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「未来/珈琲 彼女の恋。」感想

未来/珈琲 彼女の恋。 (GA文庫)

〈あらすじ〉
自称・未来からやってきた〝娘〟と邂逅したことから幕を開ける、ちょっと不思議で温かいTime-Travelラブコメディ!
第6回GA文庫大賞奨励賞受賞作。
「――私のことをいやらしい目で見ましたね、父さん?」
ある日、高校生の湊遼太郎が家に帰ると、そこには全く知らない娘の姿があった。
雪音と名乗る少女( 胸ナシ)は、未来から来た遼太郎の娘だという。
しかもある日、娘はふたりに増えていたのだった(こっちは巨乳!)!
プラチナブロンドで儚げな彼女・阿梨亜と遼太郎の関係が深まるのを邪魔してくる雪音。 雪音はなぜふたりを邪魔してくるのか。ふたりは未来からどうやって飛んで来たのか。
謎に異能に家族の絆も相まって、物語は息も吐かせぬ展開へ……!?
ちょっと不思議で温かい、第6回GA文庫大賞奨励賞受賞作。

少し前、ラノベ読みが集まる飲み会の席でイラストレーターの話になった際、今後活躍するだろう方の名前を偏見満載で語っていたら「てりあさん、アマガイタローさんのイラスト好きでしょ?」と言われドキッとしました。好きなクラスの女の子の名前を言い当てられたかのような、そんな恥ずかしさを覚えた。はい、アマガイタローさんのイラスト…大好きです。

と、いうことで電撃文庫の方でイラスト担当している作品は買い逃してしまったけれど、こちらのGA文庫大賞作品は発売日に無事ゲット。正直、イラスト目的でしたが…いや、面白かった。あらすじにある通り、心温まる良いラブコメでした。

隣に住む幼馴染に恋する高校生・湊遼太郎の元に現れたひとりの少女。遼太郎のことを「父さん」と呼ぶ雪音と名乗る同じ歳頃の「娘」は、この時代…過去にタイムトラベルしてきたという。湊家の血統に継がれる一生に一度だけ使える時間移動の異能。その力を使って父親の元にやってきた雪音は、将来母親になる女性…父・遼太郎と結ばれる幼馴染・阿梨亜との恋路を邪魔すると告げる。何故実の娘がわざわざたった一度しか使えない異能を使って過去に渡り、父と母の仲を妨害しようとするのか…その理由を知る時、本当の「家族」の物語が始まる。

幼馴染の可愛い女の子にゾッコンの主人公。ちなみにその可愛い女の子も主人公にゾッコンという、物語開始時点でどう考えてもラブコメ的にはゴールしている状況。実に腹立し…羨まし…美しい幼馴染同士の関係。そんな二人の仲を「とある理由」から邪魔しようとするのが、遼太郎と阿梨亜の双子の娘。

しかし邪魔する邪魔すると言いながらも、重度のファザコンのためか、遼太郎に甘々で結局は恋路を応援しているようなカタチになっているのはラブコメ的には正解だと思います。そんなファザコン雪音を追いかけるようにして現れるのが、もうひとりの娘にして雪音の妹である鈴音。姉を言葉で弄り倒し、サバサバしていて何処か男っぽい感じの鈴音と女の子らしく天然な雪音の姉妹はバランスが取れていて面白い。

基本的には前半、ドタバタしながら明るいテンポで展開されていて、遼太郎と阿梨亜とイチャイチャに「パパ大好き!」な雪音、実はお父さんに甘えたい鈴音の本心が介入したりして楽しくかつサクサクと読んで行ける。後半からは双子ちゃんが何故過去に…若き父の元に飛んできたのか、その理由が明らかになり、今度は「家族」を想う温かいストーリーへと変化する。前半はラブコメを楽しみ、後半は双子ちゃんを父性たっぷり見守って上げる…というか。そんな視点で物語を追いかけていくと楽しめる。

ただひとつ、気になったのは新人賞作品なのに完全に「続きモノ」になってしまい、新人賞作品としてどうこう語れなくなってしまっているところかな。次は舞台を未来に移す感じではあるけれど、シリーズ作品として楽しもうと思う。