飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「この恋と、その未来。 -一年目 春-」感想

この恋と、その未来。 -一年目 春- (ファミ通文庫)

〈あらすじ〉
超理不尽な3人の姉の下、不遇な家庭生活を過ごしてきた松永四郎。その地獄から逃れるため、新設された全寮制の高校へと入学を決めた彼は、期待を胸に単身広島へ。知らない土地、耳慣れない言葉、そして何よりもあの姉達との不条理な日々から離れた高揚感に浸る四郎だったが、ルームメイトとなった織田未来は、複雑な心を持つ……女性!? 四郎と未来、ふたりの奇妙な共同生活が始まる――。『東雲侑子』のコンビで贈る、ためらいと切なさの青春ストーリー。

高校の修学旅行で広島に行ったのを思い出した。広島に一泊してから残り二泊は京都で過ごす旅。初日、広島平和記念公園を見て回り、名前を完全に忘れてしまった何処ぞの美術館から帰って宿につき、翌日テレビを点けたら平和記念公園にペンキがぶちまけられる事件が起きたのを知る。その酷いニュースを見てからもう一度平和記念公園に行ったらマスコミが大勢いた…広島への僕の記憶はその事件が大半を占めていた。

『好きなライトノベルを投票しよう‼︎』『ライトノベルツイッター杯 新規部門』それぞれ2014年上半期1位を獲得した青春小説。面白い面白いとオススメされ、いつもならば他人のオススメなど気にもせず突き進むのだけど、流石に最近の読書量を考えるとそうも言ってられないと読みました。

性格のキツイ三人の姉にこき使われる毎日に疲れ果てた松永四郎は、高校入学を機会に東京の親元を離れ広島に渡る。自由な校風が売りの全寮制の新設高校…期待に胸膨らませる四郎であったが、同じ東京からきたルームメイトである織田未来の存在が、四郎の期待を不安に塗り替えていく。性同一性障害。高校教職員の他、生徒ではルームメイトの四郎のみに明かされた未来の真実。女の身体に生まれながら男性で在りたいと訴える未来の言葉を受け、四郎と未来は一緒に暮らしながら、学園生活を送ることになる。

まず言わせて頂きます。
評判通り、面白い!
ほんとこれからの物語でもある。だけど間違いなく今後、四郎と未来の関係は僕たちを楽しませてくれる。

『性同一性障害』という心と身体の違いに悩む未来。彼女が…いや、彼、と書くべきなのかこれも悩むところではあるけれど…未来が四郎に望むのは友達としての関係。「頼りない男の子」そのものの四郎よりも余程男らしい未来の振る舞い。未来を男だと疑う者はその真実を知る者以外おらず、だからこそ四郎は未来との関係に苦悩する。意識しないようにしても、忘れようとしても、同じ空間にいる「女性の身体を持つ未来」という存在を頭の中から押し出すことはできない。クラスメートの女の子とデートをしていても、未来のことを意識から外すせず、何か思案する未来を想って悶々とする。どんなに否定しても、間違いなく。どんなに未来が望んでいても、間違いなく。四郎は未来に恋をしてしまった。その心と、その身体に。

ただこの物語がどう進むのか期待することは、四郎は恋をしたものの、未来との恋を実らせるつもりも…そもそもその恋を明らかにするつもりもないこと。未来が四郎に望む通り、表向きは、親友で居続けることになる。友達。親友。この関係が変わることがあるのか、あくまでも青春の一ページとして四郎は胸に想いをしまいこんでしまうのか。この物語の行き先が気になって仕方がない。