飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「クズと金貨のクオリディア」感想

クズと金貨のクオリディア (ダッシュエックス文庫)

〈あらすじ〉
底辺高校生・久佐丘晴磨と、天使のような後輩・千種夜羽。同じ階層にいられるはずのなかった二人は、とある偶然をきっかけに接近してしまう。異常気象、異常現象、異常行動……少しずつ歯車が狂いだしていく二人の日常と奇妙な都市伝説。曰く「ランダム十字路」――真夜中、突き当たった丁字路で誤った道を選ぶと、二度と帰ってこられない。行方不明の女子をなりゆきで一緒に追うなか、晴磨と夜羽の思惑は大きくすれ違い……!? レーベルを越えて広がる新世代プロジェクト第一弾! これはふたつの視点から紡がれる、終わりゆく世界とめくるめく青春の物語――。

「さがら総×渡航」の人気作家コンビが手掛ける『プロジェクト・クオリディア』……一体これはどう展開していくんだ……!

……あ、もしかしたら掛け算の順番が違くて「渡航×さがら総」かも。(どうでもいい)

人は見た目が十割と考える世の中を斜に構えて見ている高校生・久佐丘晴磨。そんな性格だから特別親しい友人のいない晴磨は、学内で美人と有名な後輩・千草夜羽と知り合う。何故か夜羽に気に入られる晴磨であったが、おかしい彼女の言動に警戒心を露わに。天使のような見た目の夜羽、しかし中身は悪魔。晴磨は夜羽と距離を置こうとするも、ぐいぐい接近してくる彼女が持ち込んだ奇妙な事件に巻き込まれていくことになる。

播磨と夜羽。
二人の視点を通して描かれる青春劇で、播磨パートを渡航先生、夜羽パートをさがら総がそれぞれ担当する。

ひねくれ少年が可愛い後輩ちゃんに好意を寄せられる。それだけを聞けば、「なにぃ!俺と変われ!」となる羨まけしからん状況ではあるけれど、夜羽の内面・視点を知った途端「こいつはヤバイ」と引くこと間違いなし。ある意味自分に正直すぎる純粋な夜羽は、高利の金貸しという高校生らしからぬ裏商売に手を染め、しかも全く悪気がない。播磨が警戒するのも当然で、なのに夜羽は失踪した債務者を捜す手伝いに引っ張り回す。夜羽は播磨のことを(いろいろな意味合いで)想っているのに、完璧なまでに心がすれ違っているのが二人の視点を読んでいると分かって面白い。青春真っ只中の播磨と夜羽の想いが重なるのは一体いつなのか。奇妙な都市伝説を追いかけながら、突き進むそれぞれの視点を「追いかける」のが楽しい一冊だった。

さてレーベルを超える企画ということで、果たしてこれからどうなるのかワクワクする。