飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「モーテ ―水葬の少女―」感想

モーテ ―水葬の少女― (MF文庫J)

〈あらすじ〉
絶望的に純粋な"絆"の物語――この世界に奇跡は存在しますか?
遺伝子の罠――数万人に一人が罹り、必ず十代の内に自殺へと追い込む奇病・モーテ。秘密と不穏に満ちた孤児施設・ドケオーに送られた少年・サーシャは、大人への憎しみを抱き、孤独に生活していた。そんな彼の前に、マノンという美しい少女が現れる。マノンとの仲が近づくにつれ、彼女の相談役・フォスターである気味の悪い男・ドゥドゥが、マノンを傷つけているのではないかと疑問を抱く。サーシャはマノンを助けるために、大きな決断をする。しかし、その裏には驚くべき事実が隠されていた。誰もが望まない、約束された自殺へと誘う「モーテ」が、孤児施設と彼らの背景に横たわっていて……。絶望的に純粋な”絆”の物語――この世界に、奇跡は存在しますか?

『絶深海のソラリス』を読んで絶望したら、『モーテ』も読みなさい、みたいな流れがありました。とりあえず電子書籍版を買ったものの、そのまま読まずに半年近くが経ち、出先で読むものがなくなった僕はついにモーテを読むことになったのです……買ってたことすら完全に忘れてましたよ。

モーテ。それは二十歳までに自殺に追い込まれる奇妙な病。親に見捨てられ孤児施設で暮らすことに少年サーシャは、同じように施設で暮らす陰のある不思議な美少女マノンに心惹かれる。だが彼女の保護者役……「フォスター」の青年ドゥドゥには人殺しの噂があり、マノンに危害を加えているのではないかとサーシャは疑い始める。ドゥドゥの言動、マノンの願いによってドゥドゥに対する疑念が確信に変わった瞬間、物語は本当の姿を現わす。

正直、「主人公のサーシャ」の視点から始まったこの物語について行けずかなり戸惑いました。これは本当に面白くなるのか……好評がなければ読み続けていたか疑問だったけど、結果、読んで良かった。

この物語は「主人公のサーシャ」「ヒロインのマノン」……これがミスリードだと気付いたところから本格的に幕を開けるのです。ドゥドゥさん、貴方が本当の主人公なんですね……これはドゥドゥの恋の物語、そして恋した相手がモーテであると知り、果ては絶望が待つ道を行くことになる。

話自体は淡々としていて、劇的に盛り上がる場面がある訳ではない。ただサーシャが見た光景が、ドゥドゥの「真実の光景」に塗り変わり、ドゥドゥへの誤解が解けると同時にしかしどうにもできない無力感が襲ってきて……良く出来てるお話だな、と感心しました。(小並感)

ソラリスもそうだけど、モーテのような物語がMF文庫Jから登場してレーベルの可能性を広げたよなあ。