飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「六花の勇者 6」感想

六花の勇者 6 (ダッシュエックス文庫)

〈あらすじ〉
〈運命〉の神殿で分裂した六花の勇者たちに、テグネウの本隊が迫っていた。六花たちはアドレットを中心に作戦を練るが、限られた戦力で厳しい状況を打破するため、リスクの高い作戦を取らざるを得ない。一方、テグネウは凶魔の大軍による物量攻撃と共に、「愛」の力を利用した心理的な揺さぶりを仕掛けてくる。絶対的不利の状況で死闘を繰り広げる六花たち。どこまでも自らの美学に執着するテグネウ。そしてついに「七人目」のすべてが明らかになる! 世界を救うことを誓い、復讐に命を懸けてきた少年に突きつけられた真実とは!?伝説に挑み、謎と戦う、圧倒的ファンタジー、第6幕!

鳥肌が立ちました。この人は天才だよ。間違いない。なんでこんな物語が書けるんだ……!

アドレットがテグネウの「育てた」七人目であることが判明し、さて地上最強さんはこれからどう行動していくのか……フレミー、フレミー、フレミーばかりのフレミー愛バカっぷり全開で、神の視点にいる読者からするとあまりの思考にアドレットを見ているのが辛くなる。もうハンスさん、何とかして下さい……と拝みたくなるくらい、ハンス以外は事態を見極められていない(無理もないけど)状況。それだけに万策尽きたハンスの姿にぞっとするものを覚える。これが、絶望か。

テグネウの嗜好、と呼ぶには彼にとっては尊すぎる感情か。愛、愛があればアドレットはどんな状況でも乗り越えて、フレミーを救う。そして愛を更に深める。その愛を奪い取った時、アドレットは、フレミーは、どんな顔をするのか……テグネウは楽しみで仕方がない。だが愛を踏み躙り続けたテグネウは、「どんな状況でも乗り越えて」しまい、テグネウを打ち破る。六花を苦しめたテグネウの最後だが、救いようのない「敵」ではあったけど、このキャラクターにいつの間にか思い入れができているのを感じた。

テグネウから解放されたアドレット。いや、アドレットにとって、フレミーにとって、まやかしでもテグネウの愛から解放されるのは良いことなのだろうか。愛の呪縛がなくても、フレミーを愛し続ける、あの愛は決して偽りではなかった……そうは、ならなかった。

テグネウの悦に浸った顔が浮かぶ。愛に裏切られたフレミーの絶望、そしてアドレットの空虚な想いは、テグネウの猛威以上に六花を苦しめると思う。テグネウがいなくなり、カークイッグも動き始め、漁夫の利を狙うドズーもいる。果たして六花は魔神を打ち破れるのか…………現状では無理だとしか思えない。