飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「86―エイティシックス―」感想

86―エイティシックス― (電撃文庫)

〈あらすじ〉
サンマグノリア共和国。そこは日々、隣国である「帝国」の無人兵器《レギオン》による侵略を受けていた。しかしその攻撃に対して、共和国側も同型兵器の開発に成功し、辛うじて犠牲を出すことなく、その脅威を退けていたのだった。
そう――表向きは。
本当は誰も死んでいないわけではなかった。共和国全85区画の外。《存在しない“第86区”》。そこでは「エイティシックス」の烙印を押された少年少女たちが日夜《有人の無人機として》戦い続けていた――。
死地へ向かう若者たちを率いる少年・シンと、遥か後方から、特殊通信で彼らの指揮を執る“指揮管制官(ハンドラー)”となった少女・レーナ。二人の激しくも悲しい戦いと、別れの物語が始まる――!

第23回電撃小説大賞「大賞」作品です。発売は2月だったので「え? 今更読んだの? おっくれってるー!」と言われそうですが、すでに読んでました。2巻を読む前に復習したかったこともあって再読。改めて思うのです。やはりこの作品は面白い!

サンマグノリア共和国を襲う「レギオン」……9年前、隣国ギアーデ帝国から放たれたこの凶悪な無人兵器と戦い続けているのは、同じ無人兵器とされている「ジャガノート」である。が、現実は違う。共和国市民から人間以下の劣等生物と不当な差別を受けるエイティシックスと呼ばれる人々は、「ジャガノート」を駆りその命を散らしていく。共和国の士官レーナは、特殊通信のもとエイティシックス=「ジャガノート」に指揮していた。そんな彼女は最も危険な戦場で戦うスピアヘッド戦隊の指揮を執ることとなるのだが……。

発売されてから半年以上。様々なライトノベル投票企画で評価されている本作。それも頷けるこの完成度。魂を揺さぶる物語。帯のコメント通り「ラスト一文まで、文句なし」だ。最後の一文に唸る。

読み進めていくと感じる、この救いのない状況をどう打開するのか。全てはここに掛かっていて、いやいや救われることなく終わっていたらこの物語はここまで評価されて「面白い」とは言われていなかっただろうな、と。

容赦なく降りかかる「差別」と無慈悲な「死」……読者はその「現実」に苛立つも、戦隊の隊長であるシンを始めとする少年少女たちの未来は本当にどん底の不幸で終わってしまうのか。そしてその悲劇に向かう運命にレーナはどう抗っていくのかをひたすら集中して読み続け……解放される。これこそ読書ですよ。この読了感がたまんねえなっ!

それは再読しても変わらなかった。やはり面白い作品は何度読んでも面白い!(当然)