「義兄 明治艶曼荼羅」感想
- 作者: 丸木文華,笠井あゆみ
- 出版社/メーカー: フランス書院
- 発売日: 2011/03/03
- メディア: 文庫
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「冥土の土産に雪ちゃんの全てをこの男に見せてやろうと思ってね」
こ、これが乙女系ノベルかっ!
ティアラ文庫はこれが初体験。
正直なところ話題になっているのを目にしただけで内容も分からず読み始めましたが、気付いたら妙な集中力を発揮して読み切っていました。
淫靡な描写よりも、義兄である章一郎の義妹・雪子への異様な執着心の方がゾクリとする。
『義兄』全体を通して章一郎と雪子の依存状態が描かれていくが、章一郎の視点が一切ないためどういった心理のもと彼が歪んでいくかは分からない。その描き方が章一郎の異様さを際立たせ、雪子が彼の支配から逃れられない説得力になっているように感じた。
終盤になって章一郎の呪縛から逃れようと動きだし、貞吉に想いを寄せ重ね合わせる。
このままハッピーエンドで終わるとは思ってはいなかったが、章一郎らしい人の心を顧みない手段で貞吉を排除する様を見て、痺れた自分も大概おかしい気もしますが。