飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「サクラコ・アトミカ」感想

サクラコ・アトミカ (星海社FICTIONS)

サクラコ・アトミカ (星海社FICTIONS)

――サクラコの美しさが世界を滅ぼす。

異形の都市『丁都』に囚われた美しい姫サクラコと、彼女の牢番である怪物の少年ナギとの恋物語。

人を魅了する美貌を持つサクラコからエネルギーを吸い取り、世界を滅ぼす力にしようとする丁都の支配者オルガ。その支配の手から逃れるため、丁都から脱出するため、オルガによって創り出された牢番ナギを懐柔しようとするが、サクラコの美しさにまるで興味を示さないナギの素っ気なさがサクラコのひとり相撲っぷりを際立たせて面白い。けれども言葉を交わし一緒に遊び触れ合うことで次第にサクラコを想い始め、ただのオルガの人形であったはずのナギがサクラコを『愛おしい』と感じるまでの流れが良かった。またそれはサクラコも同じであったが、そのナギへの想いをオルガに利用され引き離されてしまう。

サクラコとナギの恋物語の合間合間に描写されていた戦争。丁都(オルガ)に敵対する七つの都市国家が、サクラコを救うために投入した巨大な力を有する怪物の幻妖が、オルガに灼かれたナギが変異した姿である事実を知った時は思わずページを捲って物語を巻き戻したよ。僕はかなり鈍いので、こういうトリックにあっさり引っ掛かって作者の手の内で転がされちゃいます。
『願いが叶ってしまう』オルガの力に絶対に勝つことは出来ないと思われていたが、『愛の力』で見事撃退ですか。オルガの言動は最後まで立派な悪役だったと思います!
読み終わって気付いたのだけど、オルガの力の原理や世界の詳しい背景の描写がなくても不思議に思ったり違和感を持たなかった、と。物語のあるがままを受け入れてた。
しかしサクラコの赤司さんへの仕打ちは酷いと思う。本当に…(泣)