飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「魔王討伐! 俺、英雄…だったはずなのに!?」感想

魔王討伐! 俺、英雄…だったはずなのに!? (このライトノベルがすごい! 文庫)

魔王討伐! 俺、英雄…だったはずなのに!? (このライトノベルがすごい! 文庫)

〈あらすじ〉
魔術と体術を極め、魔王を倒した英雄ラグナが求めたものは、小さな幸せ――仲間との楽しい語らい、愛する家族とすごす平穏な生活――だったのに!!!
圧倒的すぎる力の前に、仲間は去り、仕事もうまくいかない……失意のラグナは「弱くなる方法」を求めて、評判のロリ美少女占い師ルーチェを訪ね、強さが10008の呪いのせいだと知る。
理由はわかった! では、どうする?
呪いを解くべくルーチェと共に旅立つラグナの弱くなるための冒険、“逆”RPGが今、始まる!
第3回『このライトノベルがすごい!』大賞・栗山千明賞受賞作。

某ハンティングアクションゲームの低レベルクエストに最強装備のハンターさんが加わると、余裕で勝利してしまう…あの感覚に似ている。
うん。確かに見せ場も共闘感もなく戦いを終えてしまうのは「つまらない」ですよね。

主人公のラグナは魔王と恐れられる存在をたった一撃で倒したチート英雄。しかしそのせいで仲間達は全く活躍できずに場が白けきり、全員ラグナの元を去っていった。
そんな出来事があり、寂しがり屋のラグナは強すぎる自分を変えようとする。

「弱くなりたい」
いまだかつてこんな願いを叶えようとする英雄がいたであろうか?
目標達成のため、美少女(?)占い師ルーチェを訪ねたラグナはそこで己の強さの秘密を知る。ラグナの身体に宿る『10008の呪い』…これが彼にとんでもない力を与えていた。
途方もない数の呪いを解くため、ルーチェの案を採用しラグナは次々英雄らしからぬ行動を取っていく。魔王育成、伝説の武器、精霊にとる儀式。全てが結果、世界を混沌に貶めるまでになるのだから、ある意味ラグナはつまらない人間などではない。

迷惑という言葉では収まらない行動。「弱くなる」ために他人の人生どころか国すら滅ぼしてしまうラグナの行動はどう考えても、願いとは逆の方向に行っている気がしてならないのですが(笑)

けれども、ラグナが誰かに受け入れて貰うために「弱くなる」ことを選択しているのだったら、その目的は達成している。大魔王と蔑まれるまでになったラグナとともに居続けるルーチェや、ラグナに救われた人々。離れ行く人たちが大勢いる中で、彼等は間違いなくラグナを裏切らない『友達』だ。
そして彼等がかけがえのない『友達』であることを、ラグナが最後にはしっかり感じているのが良い。コメディ要素が強い中、話をそこに落としている。

全体的にラグナばかりが目立ってしまっていたのでもう少しルーチェがヒロインとして機能してくれれば良かったかな、とは感じるものの面白い作品でした。