飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「黒猫の水曜日 Wednesday in Chat Noir」感想

黒猫の水曜日 Wednesday in Chat Noir (集英社スーパーダッシュ文庫)

黒猫の水曜日 Wednesday in Chat Noir (集英社スーパーダッシュ文庫)

〈あらすじ〉
アメリカの民間軍事会社に所属する少女、篠原禊の元に、CIAから奇妙な依頼が持ち込まれる。
日本屈指の名門校、私立櫻谷学園に通う高校生、十河正臣を監視し、護衛せよ--
《黒猫》のコードネームで呼ばれる、華奢で童顔な、この少年の正体は?
学園に潜入した禊の前に、次々と現れる謎めいた人物たち。
そして時を同じくして世界各地で《黒猫》にまつわるテロ事件が頻発し始めていた……
世界を舞台に、陰謀と銃撃が渦巻く学園ミリタリーアクション、ここに開幕!

いやー面白かった!
前半の日常と後半の非日常パートそれぞれの味がしっかり出ていた。主人公の禊の魅力もあって前半は日常生活に戸惑う彼女を見てニヤニヤ、後半は血が舞う銃撃戦の緊張感にドキドキ。作者の地木さんはライター活動が長いこともあってか、文章もきちんとしておりさらりと読んで行けた。

民間軍事会社に所属する少女・篠原禊は、生まれ故郷である日本である少年の護衛をすることになる。彼の名前は十河正臣。禊は正臣のいる特殊な高校に転入し彼を監視し始めるのだが、いつも独りでいて儚げな印象があるものの普通の男の子にしか見えない。護衛任務に疑問を抱きながら日常を過ごす禊は、次第に護衛対象である正臣に心惹かれるようになる。

民間軍事会社に身をおいているせいで男勝りの性格に育った禊。非日常とともに生きる彼女が送り込まれたのは平和そのものの日本の高校。慣れない日常生活に四苦八苦する禊の姿がなんともまあ可愛いらしい。戸惑いながらも護衛をしっかりしなければならない禊は、しかし真面目にやろうとすればするほど日常生活から浮き上がる。そんな禊追い打ちをかけるように襲いかかるのが「恋心」である。自分を悩ませる正臣への感情を理解出来ずに悶える禊の女の子な面は読者の心を見事撃ち抜いてくれるはず。

そして後半はガラリと展開が変わり、非日常へと誘う。禊の知る非日常…バイオレンスな世界が待っていた。銃弾が飛び交い、人が容易く死ぬ世界で、日常生活の中で張られていた伏線が展開されていく。なるほど、ここに繋がるのかと思う感覚は実に心地よい。真相を知れば知るほど、確かに「質の悪いジョーク」だと思ってしまうが、これが現実なのだ。狂っているよ、ほんと。

禊の復讐。正臣の初恋。
どちらも血に塗れた道の先にある。この物語の行く末をしっかりと見守りたい。