飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「魔遁のアプリと青炎剣」感想

魔遁のアプリと青炎剣 (電撃文庫)

魔遁のアプリと青炎剣 (電撃文庫)

〈あらすじ〉
対立する巨大メーカーによって東西に二分された都市。
その中央に位置する高天原学園では、両企業が開発する携帯端末《スマートギア》と特殊なアプリを使って、能力者たちが成績を競っていた。
東区傘下の青龍院に所属する祇堂拓真は、年間成績上位30名に与えられるEXアプリ保持者として新年度を迎える。
そんな拓真の前に現れた転校生ユマは、学園生に必要不可欠なある能力を失っていて──。

世界観や設定にキャラクター、そして設定に基づくバトルは面白いんだけど、それを読者に伝えるには情報量が多すぎたかな、と。地の文が設定説明でゴチャゴチャしてしまい、この手の作品に大切な速度…「テンポの良さ」が失われてだいぶ損をしている。それだけに惜しい作品。

『旧文明時代』が崩壊した300年後の世界。
人の住める場所は世界に点在し、その内のひとつ…『旧文明時代』の遺跡から喪われた旧文明技術の遺産を掘り起こし力に変えている二大巨大メーカーが支配する都市が舞台。二つの企業によって旧文明時代のように技術が発達した都市で、それぞれの企業をバックボーンにした二つの学園が存在する。常人離れした身体能力を持つ特殊な子供たちを集めた『青龍院』と『白虎院』は、魔法のような力を現実に召喚する携帯端末を駆使して個人ランキングを押し上げるため日々競い合う。

携帯端末を操作しアプリを立ち上げる。まるでスマートフォンを使うように、力を使うその姿はまるで『忍者』ようである。
『清流院』に席を置く主人公の拓真は、ある目的から成績上位者で無ければ就くことのできない特殊な職業を目指し、努力を重ねる少年。街を疾駆する拓真の姿は、確かに忍者に似ている。そんな拓真と一緒に行動する幼馴染の彩華と親友の優介もまた優秀で、非常に良いチームを組んでいる。

物語が本格的に始まるのは、拓真が『白虎院』の編入生ユマに出会ったことから進む。絶大な力を持ちながら、自由に扱うことのできないユマが抱える問題。仕事が絡んでいるとはいえ、ユマを放っておかず首を突っ込んでいく拓真の姿勢には熱いものを感じて、好感がもてる。ユマのために頑張る拓真を見て不安を感じる彩華は乙女してるなあ。もっと素直にならないとユマに取られてしまう、幼馴染ヒロイン定番の結末が待っているぞ。

醍醐味であるアプリを使っての忍者バトル(?)は、最初に言ったとおりどうも複雑な用語が乱れ飛ぶため、速度が足りないような気がする。設定周りの表現をもっとサッパリさせれば読みやすくなるのに…話そのものは面白いだけに、ほんとモッタイナイ。