「恋に変する魔改上書」感想
〈あらすじ〉
女としての魅力(おもに胸のボリューム的意味において)が少ないことをちょっとだけ気にしている女子高生・莉子には納得がいかないことがあった。
突然、幼なじみの冴えない男子・諒太が3人の美少女と仲良くなり、モテモテ状態になっているのだ。天真爛漫で巨乳の瑠流、ミステリアスで色気たっぷりの響華、クラス委員長の水菜。
目の前で繰り広げられるハーレムラブコメにイライラの莉子だったが、ひょんなことから現実を「上書き」してしまう「ラブコメの魔」の力を手に入れて……!?
第7回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作。
発想は面白い!
でも正直読みにくい構成でした。
読んでる最中感じ続けた勿体無さは、二つの「視点」を行ったり来たりし過ぎたところにあると思う。ほんと、冒頭から惹かれる発想だっただけに惜しかったなあ。
高校入学早々、元気いっぱい童顔巨乳にクールな表情から飛び出すセクハラ発言、更にはドタバタあわあわメガネ委員長と、個性豊かなヒロインたちにモテ始める諒太。何の変哲もない高校生に過ぎない諒太がなぜこんなにモテるのか…?
マンガ、アニメ、ラノベでは良くあるラブコメの学園風景。それを歯痒い思いで見ているのは、この物語の主人公であり、諒太の幼なじみでもある莉子。
文芸部に所属することとなった莉子は、そんな諒太の『ラブコメ風景』を書き始めるのだが、『ラブコメの魔』なる謎の力によって、莉子が書くヘンテコなラブコメがそのまま現実に置き換わり始め、次第に莉子本人も巻き込み、諒太たちはおかしなラブコメを演じ始める。
主人公が「ありきたりなハーレムラブコメの男主人公」の幼なじみ。これが真っ正直な単なるラブコメならば、主人公のハーレムの一員に過ぎない彼女、莉子がおかしなラブコメを描き始めたことから、どんどん変な方向に進んでいく様が「面白いポイント」なのだろう。
おかしなラブコメを見ている莉子と、おかしなラブコメを演じることになる諒太たち。この二つの視点、あるいは舞台を交互に行ききするのだが、莉子がおかしなラブコメを書いた時点で、諒太たちがどんなおバカなラブコメをするのかが「見えてしまっている」のが、ひとつ物語を回りくどいものにしているように思える。
それだけに莉子が『ラブコメの魔』というラブコメを司る存在なのにラブコメの「ラ」の字も理解していないトラブルメーカーに苦戦しながら、無茶苦茶なラブコメを演じさせられている諒太とヒロインたちを想う…などの「莉子の視点」の面白さが殺されている気がしてならない。
終盤、この視点がようやく収束して、面白さが分かってくるのだが、しかしそれでは仕掛けとしては遅すぎるかな、と。とにかく莉子の視点をもっと有効に使って、ラブコメ側をスッキリさせて欲しかった。ラブコメ側のおかしな超展開…あえてそうしているんだけど、それがかえって読みにくくしてるんだよなあ。
頭の文章に戻るんだけど、発想は面白い。だからこその勿体ない…なんだよねえ。