飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「しずるさんと偏屈な死者たち」感想

しずるさんと偏屈な死者たち (星海社文庫 カ 2-4)

〈あらすじ〉
原因不明の難病で病室にこもりきりの“深窓の美少女”しずるさんは、好奇心旺盛な“わけありお嬢様”よーちゃんが持ち込む難事件を病床にいながらにして次々と解明していく。唐傘小僧に宇宙人、幽霊犬に吊られた男……これは奇怪で不気味な、最初の事件簿。
新装版にして完全版、星海社文庫版しずるさんシリーズ第1弾!

僕がこの作品を『富士見ミステリー文庫』で読んだのがもう10年も前のことになるのか。かなり知りたくない事実だなあ…(遠い目)
あらすじについては触れません。過去に読んだ上遠野作品として、話したいことだけ話します。と、いうか今更内容について言うこともないのよね。何しろ10年前の作品だから(苦笑い)

上遠野作品にしては…と、言ったらかなり失礼な話になるけれど、例えば同じ星海社文庫から再販している『ナイト・ウォッチシリーズ』などよりも、入りやすい物語だと思う。まあ比べる相手が可笑しいという意見もありそうだが。
上遠野さんらしいミステリーといって、伝わるのは同じ上遠野浩平が大好きな人たちだけだろう。『富士見ミステリー文庫』時代に読んだ時も、「はて?これはミステリーなのか?」と首を傾げた思い出がある。「奇妙な事件を解決すること、あるいはその過程」を楽しむ以上に、上遠野キャラクターたちの「対話」を楽しむことに全力を注いで欲しい。『富士見ミステリー文庫』の他の作品も、ライトノベルらしく、キャラクター小説としての側面も大きかったからなあ。

10年の時を経て、様相を変えたこの作品と再開した時。何に一番驚いたかというと、「百合」の文字が踊っていることだ。当時の僕に、そのような「視点」でこの作品を見たことはなかった。なるほど、読み直してみると、よーちゃんがしずるさんの所作にドキドキしたり、しずるさんがよーちゃんに思わせぶりな台詞を言ったり。二人の「単なる友人関係」を超えた絆をひとつひとつ読み取る作業も、この物語の楽しみ方かもしれない。しかしまあ、モノは言いようだなあ。

今回読み直して、「都市部を襲った謎の電磁波」の正体が実に懐かしく、何処か切ないものを感じた。エコーズ。ブギーポップを時代の流れの中で読んできた人でも、なかなか思い出せない名前では?そうでもないか。今、とても心地の良い気分だ。