飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「初恋コンテニュー」感想

初恋コンテニュー (ガガガ文庫 な 7-1)

〈あらすじ〉
この世にはクソゲーやバグゲーと呼ばれ、歴史から削除されたゲームがある。そんなソフトばかりが発売され続けたことで、誰からも見向きもされず話題にあがっても『ゴミ捨て』などと揶揄されるだけのゲームハードも存在している。主人公・綾野 海の妹・空はそのハードにあまりにも熱中していた。彼女はゲームをこよなく愛し、どんなに理不尽なソフトでも楽しんでプレイしてきたのだ。……自分自身がゲームに取り込まれるまでは――。ゲームに疎い兄が妹を助けるためにゲームの世界で大奮闘! 萌えて燃えられるデスゲーム風ラブコメ物語!

Q:「恋愛シミュレーションゲームの中に放り込まれてしまったら貴方ならどうしますか?」
A:「ステータスが最低値になるのでヒロイン達を攻略…できません!!」

主人公が恋愛SLGの中に閉じ込められ、初めての恋愛を経験する。危機感はそれほど強くなく、基本ほのぼのとした展開ながらも締めるところはキチンと締める物語で楽しめました。

高校生の綾乃海はある朝、ゲーム好きの妹・空を起こすため部屋に入る。ゲームをしたまま眠りこけてしまったように見える空を起こそうとし、ふとした興味でプレイ途中のゲームを触った瞬間、海はゲームの中に取り込まれていた。そしてそこには眠っていたはずの妹の姿も。
人知れず消えて行ったゲームハードのつくも神・パーシィによって呼び込まれ、女性である空の変わりに恋愛SLGを攻略することになった海であるが、ゲームも初心者なら恋愛も初心者。ヒロイン攻略に意欲を見せると何故か不機嫌になる空から助言を貰いながらゲームを進めていく。

実はお兄ちゃんのことが大好きな妹と協力しながら、恋愛SLGを攻略しようと運動バカの海が駆け回る展開が面白い。攻略ヒロインに設定されている女性達は、現実世界でも海に関係ある人物が配置され、海が攻略を目指すのは先輩の年上ヒロイン。学園のアイドルと言ってもいいほど美人の先輩を攻略しようとするものの、恋愛ステータスが不足しているためか、あるいは十分すぎるためか、他ヒロインのフラグを建ててしまっては強制的にへし折る作業が何とも切ない。一途でないと空が怖いのです。空の助言があるのにアホな行動繰り返してゲームオーバー→コンテニュー、空が呆れるの流れはお約束のようなもの。

面白おかしく恋愛SLGを進める中で、ヒロイン達との現実の関係が「過去」ばかりと現実と虚構の違いに戸惑う場面も。虚構世界でこれだけ仲良くなったのに、現実での彼女達とは心が離れている。真っ直ぐな海が虚構の中で得たものをどう現実にも反映させようとするのかも注目ポイントではある。

全体を通して伏線を回収、あるいはこの段階で回収するつもりがない…というのがあって少し残念だった。それでも十分楽しめる作品だったのが、海が愛すべきバカなのと、健気な空がいたおかげだなあ。