飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「ただし、彼はヤンデレにさえモテません」感想

ただし、彼はヤンデレにさえモテません (MF文庫J)

〈あらすじ〉
モテたくてモテたくてしょうがない普通の男子高校生であるところの俺、御厨シンイチは、少し"変わっている"幼馴染、犬神サチに付きまとわれているため、普通の女の子に相手にされない悲しい日々を送っていた。けれどある日、サチが俺の友人、長政秋彦に恋心を抱いていることを知り、そこで俺は気づくことになる。サチと他の男が付き合い始めたら、サチが俺から離れてくれるのではないかと! かくして、俺とサチの共同戦線が幕を開けた。「……シンちゃん、早くしないと、長政くんのストーキングに遅れちゃう」前代未聞のドタバタ冷やしラブコメ(?)、スタート!!

全てのラブコメ系主人公に言えることであるが、それでモテていない…だと…!?
そんな嘘がまかり通ると思うのかー!絶望した!この世界に絶望した!いっそ俺のことを殺せー!(床の上に転がり喚き散らす)

男子がたった10人しかいない元・女子高に入学した御厨には二つの悩みがあった。ひとつは女の子だらけなのに全くモテないこと。そしてもうひとつは、某ホラー映画の貞子に似ている幼馴染、犬神サチに懐かれていること。周囲を怖がらせるサチと常に一緒にいることから、女の子たちに避けられていると結論付けた御厨は、サチを自分から離すため、彼女の思い人だという御厨の友人とカップルにしようとする。しかしサチが異様に恥ずかしがった結果、御厨はサチの「ストーキング」行為に付き合うことになり……。

題材は間違いなく「王道ラブコメ」なのに、ヒロインのサチの病み具合と伊藤ヒロさんの斜め上の文体によって思わず笑ってしまうおかしなラブコメに仕上がっている。鈍感というレベルを超えているまさに「ラブコメ主人公」といった御厨は、気を引こうとしているサチの言動に全く気づくことなくお節介を焼くので、まあサチの絶望感は分かるかなあ。親しい仲でもあんなにくっつく男女、この世にいませんからー!

とにかく人の好意に気づかない御厨。ここまで鈍感を徹底されると逆に気分がいいぞ。サチを『ヤンデレ』と呼ぶにはちょっと可哀想な気がするが。ちょっと暗くてネガティブなだけの可愛い女の子でしょ? ごめん、それは嘘だった。
御厨とサチの夫婦漫才のようなノリは最後まで続き、ラブコメとして非常に読みやすい出来だった。続きがあるようだけど、この作品だけでも纏まっている気もするけど。