飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「“花散里" ヒカルが地球にいたころ……(8)」感想

“花散里

〈あらすじ〉
母との別れを支えてくれた葵を、妙に意識してしまい動揺する是光。そんなところに、「ぶ、文化祭の実行委員に、赤城是光くんを、推薦します」みちるの発言に始まり、月夜子主催の日舞研の出し物、朝衣の特別警護班への参加要請と、文化祭の準備に奔走するハメになってしまう。学校行事には慣れない上に、クラスメイトには避けられ、帆夏も何故か素っ気ない態度。そんな時、資料を差し入れてくれる、正体不明の援助者が現れ――!? 大人気学園ロマンス、第8巻!!

ここまで丁寧に描かれてきたみちるの恋が、ここに花開く。その開花はみちるらしく、美しくもひっそりとしたものだった。

是光も葵も式部もハッキリしない。好きな人に対して好きと言えない。勝手に思い悩んで雁字搦めになっている。そんな素直になれない彼等に苛立ちを覚えながら、甲斐甲斐しい恋路を行くみちるを可愛いと思う一方で、人との関わりに悩み、時折奇妙な言動をする彼女に不安を持つ。初の「ヒカル案件」ではない…という引っかかりに答えを用意している辺りが上手いな、と。

みちるの無茶ぶりによって、文化祭実行委員になった是光。もっとも「らしくない」役職を与えられた是光であったが、不器用なりに誠実にこなして行き、クラスの信頼を得ていく姿に感動してしまったのは、親心みたいなものだろうか。しかし8巻目にしてクラスに馴染み始めるとは、是光を違う意味で侮っていた。

結果的にみちるの恋路は、是光、葵、式部の想いを改めさせるいい機会になった。そのことでみちるは不幸になっていない。むしろ、前を向いて歩き始めた。終わりに向かってそれぞれの想いが交錯する中、ある意味動き出してはいけない女性…夕雨は、この恋の物語をどう揺るがすのか。穏やかなまま終わるはずがない…よね…。