飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「MONSTER DAYS」感想

MONSTER DAYS (MF文庫J)

〈あらすじ〉
【邂逅の日】1200年前のその日、世界に魔物が出現した。それはドラゴンであり、妖狐であり、巨人であった。そして戦いが生まれた。魔王が生まれた。英雄が生まれた。多くの戦い、犠牲、そして時を経て、人間と魔物は何とか共存している。とはいえ、未だ軋轢が絶えない人魔間の平和を維持するため、人魔調停局の新人実働官ライル・アングレーは今日も事件と、上司であるオーロッドの叱責と戦っている。そんな中、相棒の一角獣であるアルミスと社会加入を求める外部魔物集落【竜羽の里】の使者を護衛することに。だが、護衛対象の使者は竜族の姫様、しかも彼女は幼い少女で――!? 第9回新人賞 <最優秀賞> 受賞! 銃と魔法の現代バトル&サスペンス活劇誕生!

これは好きな世界観とキャラクターだなあ。MF文庫Jは色んな世界を描く新人さんを上手くデビューさせている印象が強い。

1200年前に起きた『邂逅の日』から魔物が人の世界に現れた。人と魔物は多くの戦争を繰り返し、今は共存の道を歩み出している。そんな人と魔物の間で発生する摩擦を消し去る役目を担う『人魔調停局』。そこで実働官として働く二十歳の青年ライルは、この仕事に就いて三年目であることから失敗も多い。そんなライルに押し付けられた新たな任務は、強大な力を持つドラゴンの使者の護衛だった。しかもその護衛対象であるドラゴンのお姫様クーベルネはじゃじゃ馬の上、世間知らずとあり、ライルは困惑するのだが、二人は次第に深い絆で結ばれていくことになる。

熱血であるものの何処か空回り気味の新人実働官のライルと、他人を知らない箱入りドラゴン娘のクーベルネの交流を描く。またクーベルネを守るため、命と誇りをかけて戦うライルの姿が心を滾らせる。

人に化け人と共に暮らす魔物がいる中で、人を憎み、あるいは魔物を憎む者たちも多くいる。それを「調停」するのだがライルたちの役割であり、仕事。しかし相手が相手だけに物騒な仕事になってしまうのがほとんど。その中で、非力な人間に過ぎないライルがどう抗い、自分を軽く捻り潰せる魔物と戦っていくのかが面白い。弱い自分を認めつつ、でも諦めずに抗うライル。そのライルを見て、孤独な少女であったクーベルネは大きく考えを変え、自分を曝け出していく。そこに強いドラゴンはおらず、ただか弱い乙女がいるだけ。

ライルとクーベルネの他、同僚である一角獣…ユニコーンのアルミスもまた強烈な個性の持ち主である。ユニコーンは乙女が大好き。そんな可愛い女の子に惹かれる女性であるアルミスの危険な行動も注目して読んで欲しい。