飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「灰と幻想のグリムガル level.2 大切じゃないものなんか、ない。』感想

灰と幻想のグリムガル level.2 大切じゃないものなんか、ない。 (オーバーラップ文庫)

〈あらすじ〉
……見捨てるなんて、できない。というか、見捨てるべきじゃない、と思う。
 見知らぬ世界「グリムガル」へと連れて来られたハルヒロたちは経験を積んでようやく半人前から抜けだそうとしていた。
ステップアップのために新たなダンジョン「サイリン鉱山」へと挑むのだが、そこはパーティに加わったメリィが過去に仲間を失った場所でもあった。
順調にいくかと思われたハルヒロたちの探索だったが、予期せぬ仲間との別行動を強いられ、更にデッドスポットという異名を持つ巨大なコボルドが襲いかかる。
 新たな試練とともに、灰の中から生まれる冒険譚の第二章が紡がれる!

人が「強く」なるためには「目的」が必要である。漠然とした想いは、希薄な力にしか繋がらない。いや、力にすらならないかもしれない。人の強さは意識がもたらすものなのだろう。

ハルヒロは悩む。現状に悩む。
レンジ。弱小パーティー。頼りないリーダー。ランタの言動。後輩義勇兵…何か明確な目的があって、今を生きている訳ではない。危険を犯してまで上を目指すこと必要はないでは? このまま弱小パーティーと罵られようと、安全な道を進むのが良いのでは? またマナトのような犠牲を生んではいけない。そうだ、そうしよう。

それでもハルヒロは悩む。焦燥感。そう呼ばれるものが、ハルヒロの背中をじりじりと焼いて行く。このままじゃいけない…何だかは分からないけど、このままでは駄目なんだ。

ハルヒロの言葉は明確な答えを持たない人間特有の歯切れないものだった。しかしその想いを受け、メリイが導いた先…次なるステップとして選ばれたのは、『サイリン鉱山』はかつてメリイが仲間を失ったダンジョだった。

ランタに煽られながらダンジョンの奥へと突き進む。普通のファンタジーの、主人公パーティーならある「こいつらなら何かを成し遂げてくれる」という期待感。それが全くない。不安しかない。ハルヒロたちは無茶をしていないか。無謀な行動なんじゃないか。お前ら弱いんだから、身の丈にあったことをしろ。死んじゃったら元も子もないじゃないか…!

不安は的中し、危機に陥るハルヒロたち。ランタを取り残し、脱出しようとする彼等に与えられたのは、一歩でも強くなるための試練なのだと思う。ランタを助けるか、見捨てるか。ランタは腹の立ち奴だ。それはハルヒロたちだけでなく、読者も感じていることだ。それでも「パーティーにいなくていい奴」ではない。そう思っていたけど、間違いだった。そしてハルヒロたちが、ここで「見捨てる」という選択肢を選んだ場合、本当の意味で「強さ」を得ることは永遠なかっただろう。だから最後の瞬間、ハルヒロにもたらされた希望は、パーティーに強さを築いたんだと感じる。

それでも未だにハルヒロたちが「弱い」のは変わらない。弱い人間がいきなり変わることはない…それは僕が、僕たちが、一番分かっていることだ。