飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「棺姫のチャイカVI」感想

棺姫のチャイカVI (富士見ファンタジア文庫)

棺姫のチャイカVI (富士見ファンタジア文庫)

〈あらすじ〉
「――トール! トールッ!!」
天翔る城砦での戦いの果てに、大空へと投げ出されたトール。
チャイカの叫びも虚しく、彼の生命は散った――かに見えたが、窮地を救ったのはジレット隊のヴィヴィとズィータだった。
ズィータは「あなたに『お願い』があります」と告げる――。
そして捕らわれたチャイカは、銀の髪と紫の瞳を持つレイラと邂逅する。
彼女は「棺担ぐ姫君。貴女に『チャイカ』の真実を教えてあげる。
貴女が本当に絶望できる――真実を」と言って、意味ありげに微笑むのだが……!?
航天要塞<ソアラ>を巡る死闘、宿業のクライマックスへ!

亡き父の遺骸を集めたいチャイカ。そのチャイカを護り「戦乱上等!」と啖呵を切るトール。
互いに支え合って成立する二人の生きる目的。その目的を改めて考えさせられる。

トールとジレット隊が共闘する展開は燃えますなあ。敵味方に別れてしまってはいるけれど、そうでなければ結構良い仲間になるのでは。一方、絶大な戦闘力を持ちながらイマイチ役に立ってない感じのするフレドリカが敗れたことに動揺し、更には「ガズ皇帝の娘=チャイカ」という存在を根底から覆す『蒼のチャイカ」』の言葉に混乱に陥るチャイカ。何の根拠もないことは分かっていても、否定しきれない想いがわだかまる。目的を失い、惰性で生きている『蒼のチャイカ』を前にして絶望にも似た感情に囚われるチャイカであったけれど、遺体集めだけではない、トールたちと共にいることが彼女のひとつの希望に…生きる目的になっているのかな、と。
再び戦乱を巻き起こそうとする殺人鬼リカルド。その戦乱を望むトールの内面を見透かした発言をするリカルドだが、決定的に違うのは戦乱を求めていてもトールはそれでも未来を見ていること。ただ人を殺すためだけに戦乱を欲するリカルドとは違う。そこに未来はない。

チャイカもトールも答えを先送りにした感じではある。特にチャイカは遺体を集めた先に起こることがいったい何なのか分かっていない。そしてジレット隊は、その隊を率いる者を失い、ここにまた生きる目的をなくした者たちが現れる。いまだ見えない謎を背負いながら、次回を待つ。