飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「再生のパラダイムシフト リ・ユニオン」感想

再生のパラダイムシフト  リ・ユニオン (富士見ファンタジア文庫)

再生のパラダイムシフト リ・ユニオン (富士見ファンタジア文庫)

〈あらすじ〉
思考昇華(パラダイムシフト)――想像を現実のものとする奇跡の力。
その力を振るい崩壊した世界で人類の敵、残留体を狩る少年、風峰橙矢は記憶喪失の少女と出逢った……。
第24回ファンタジア大賞<大賞>受賞作!!

ついに「ライトノベルの歴史を変える一冊」を読んじゃいましたよ!!…いやね、面白いとは思うんですけど、この煽り文句は余計なんじゃないかと感じた訳です。パラダイムシフトは『ライトノベル』として普通に楽しめる。それで良いと思います。

舞台は大陸が海に呑まれた150年後の世界。海に潜水する都市に暮らす少年・風峰橙矢は、人を襲う異形の生命体・残留体に対抗する武装研究員のひとり。その橙矢が出会った記憶喪失の少女ほのみを保護した日から、彼の背負う暗い過去との決別へと向かう戦いが始まる。

物語最大の設定である『思考昇華』…パラダイムシフト。素質があり、特殊な訓練を積んだ者にしか使うことのできない神秘的な力。想像したものを現実に創造することの出来るこのパラダイムシフトを使い、橙矢は同じようにパラダイムシフトを操る残留体と戦いを繰り広げる。

パラダイムシフトを使ったバトル面描く非日常の他、日常パートでは記憶喪失ではあるけれど元気いっぱい人懐っこいほのみとの交流もまた実に楽しめる。ほのみの笑顔には人を楽しくさせる力がある。姉に癒えない傷を付けてしまったことを深く後悔し、その後悔に囚われていた橙矢の未来を開かせたのは、間違いなくほのみ。そしてほのみの正体を知っても、未来の輝きを魅せてくれた彼女を受け入れて、共に歩もうとするまでの二人のやり取りは好き。

「ごめんなさい」ではなく「ありがとう」を言い合う関係。後ろ暗いとこがなく、この前向きな関係が、橙矢とほのみ、二人を囲う人々を笑顔にさせてくれる。次は学園編ということで更に笑顔の場面が増えるのではないだろうか。期待したい。