飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「魔術士オーフェンはぐれ旅 鋏の託宣」感想

魔術士オーフェンはぐれ旅 鋏の託宣【通常版】

魔術士オーフェンはぐれ旅 鋏の託宣【通常版】

  • 作者: 秋田禎信,草河遊也
  • 出版社/メーカー: ティー・オーエンタテインメント
  • 発売日: 2013/02/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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〈あらすじ〉
《魔王》オーフェンの活躍により、キエサルヒマ大陸からの刺客は退けられた。
しかし、ラポワント市の被った損害は大きく、魔術士たちは社会からの糾弾を受ける。
一方、マジクは大陸の果てで、宿敵であるヴァンパイアと対峙していた。
二人の交渉が決裂し、《死の教主》が宣戦布告をすると同時、大陸上空を巨大な黒い《結界》が貫く。
《結界》の中心となったのは、ローグタウンのフィンランディ邸だった。完全に外界と隔絶され、取り残されたマヨールとラチェットは脱出の道を模索する。
《戦術騎士団》、《リベレーター》、《キエサルヒマ魔術士同盟》、《アーバンラマの三魔女》そして、《魔王スウェーデンボリ―》。複雑に絡み合う状況の中、神託を下されるオーフェンの行方は?
分かたれた世界で、それぞれの選択が試される。流転の物語。

オーフェン新シリーズも終わりに近づいている。寂しいと思うと同時にホッとする想いもある。自分の中で『魔術士オーフェン』という作品を高めすぎてしまった結果、読むことに対する楽しさよりも怖さが出ているのだと思う。まあ勝手にプレッシャー感じているだけのお話なんですけどね(笑)

ガンズ・オブ・リベラルとの戦いを終えるも一段落とはいかず、変わらず緊迫した状況が続く原大陸。様々な人間が様々な場所で様々な危機や異常な事態に面しているためか、頭の中の整理が大変で仕方ない。
昔のままではいられない。マギー家三姉妹にしてもサルアにしても、キエサルヒマ大陸での関係からは想像もつかないほど遠く離れてしまった。それでも何とか関係を紡ごうともがくものの、それぞれの立場がそれを許さない。とても歯痒い状況に苛立つが募る。
それに今は家族もいる。今回は『家族』を主軸に置いた話でもあったように思える。原大陸の事態に踊る者たちの大半は何かしらの『家族』の輪の中にいる。理屈では済まない『家族』というまとまりが、感情を狂わせる場面もあれば暴走しそうな想いを押し留めてくれたりもする。昔だったらとっくに飛び出して行って相手をぶん殴っている状況なのに…オーフェン本当に大人になったなあ、としみじみ。時折見せる親バカぶりも、読者の心をギュッと掴むものがある。

そんな親父の気持ちを知ってか知らずか。アイルマンカー結界に囚われたラチェットたちは、おかしなジェイコブズのペースに載せられていたが、最後には見返すことに成功するので、この年下組は侮れない。これで大きな問題のひとつが解決したので、もうひとつの大きな問題…カーロッタに目を向ける。
しかしお騒がせペイジット。オーフェンの言うとおりアザリーの行動に似ている…つまりロクなことをしないということか。兄貴まだまだ振り回されるか…。