飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「穢れ聖者のエク・セ・レスタ」感想

穢れ聖者のエク・セ・レスタ (MF文庫J)

〈あらすじ〉
天より与えられし無双の兵器「輅機(ロキ)」の力で世界征服を目論むフィガロ魔皇国。その圧倒的な武力を前に祖国を滅ぼされた亡国の皇子シリュウは、魔皇国の侵略戦争の最前線に立たされながらも、一切の戦功を認められない不遇の日々を送っていた。復讐に燃えるシリュウ。そんな彼の野望を見抜いたのは"聖女"と称えられる義妹エトラだった。「さあ、お義兄様、共に末短き未来を歩んでいきましょう」――その復讐に幸いと災いのあらんことを願う兄妹が"神代の詩(エク・セ・レスタ)"を詠う刻、絶望へとつながる叛逆の扉がここに開かれた。新時代の幕開けを告げるリベリオン・サーガ、降臨!

なんというか、表紙イラストに色んな意味で騙されたな、と。いや、イラストは勿論良いんですよ。ただ美少女が表紙を飾っているので、ラブコメ要素がある程度あるのかと想像したので驚いた。

世界侵略を進めるフィガロ魔皇国によって、祖国を滅ぼされた亡国の皇子シリュウ。皇帝の気紛れによって生かされた上に養子に迎えられたシリュウは、いつか皇帝を討ち、フィガロ魔皇国を打倒することを誓う。しかしフィガロ魔皇国には圧倒的な力…天から与えられ、皇帝の血を引く者にしか扱えない巨大人型兵器『輅機』が存在する。成長したシリュウは卓越した『輅機』の使い手である第五皇女ディーヴァの部下として戦場の最前線で戦うものの、復讐を果たす足掛かりを得ることができない日々が続いていた。そんなシリュウの野心を見抜いた義妹の皇女エトラは、ある取引をシリュウに持ちかける。

ラブもコメディも一切なしの、ガチンコ復讐劇に…心踊りました。僕はこういうお話大好きです。

亡国の皇子が自分の国を滅ぼした大国に復讐しようとするも、その方法が見つからず喘いでいたところを、国民には「聖女」と呼ばれる「腹黒」皇女様エトラと共謀することになる。ディーヴァの側近として知略を巡らせ、腕が立ち最前線で戦い生き抜くシリュウ。自分の国を滅ぼそうというエトラは、シリュウ同様、複雑な事情のもと王族となり、『輅機』を操ることができるがそれに相応しい体力がない。互いが互いの「無い」ものを補う共犯関係。野心を胸に秘め、同じ目的のため覚悟を決めた二人の間に出来始める奇妙な絆。

あまりに非力に見えるシリュウとエトラ。二人の復讐が成り立つのかどうか。ドキドキしながら見守ることになる。この緊張感は非常に良かった。楽しめた。ただ想像通り、ほぼゼロの状態から復讐劇を始めるとあって、今回は本当の第一歩を踏み出しただけであり、新人賞作品ではあるが、話の切りは付くも完結には程遠い感じがする。シリーズとしては楽しみであるものの、新人賞作品としては中途半端なのが評価しにくい点ではあるかな。