飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「きんいろカルテット! 1」感想

きんいろカルテット! 1 (オーバーラップ文庫)

〈あらすじ〉
「このみんなでずっと吹きたかったんです。私、目標があるんです」
ユーフォニアムという楽器の演奏者である摩周英司(ましゅうえいじ)は、恩師の紹介で中学生の少女たち4人の楽器コーチをすることになる。清楚で真面目な菜珠沙(なずさ)、元気な性格の貴ノ恵(きのえ)、しっかりものの美夏(みか)、上品でおとなしい涼葉(すずは)。「ブリティッシュ・カルテット」と呼ばれる日本の吹奏楽では馴染みのない楽器を演奏する少女たちに英司は感動し、彼女たちが最高の四重奏(カルテット)を奏でられるように奔走する。
心に響く青春音楽ストーリー、演奏開始!

中学時代の音楽の成績は10段階中3でした。ちなみに1か2が付くのは不登校児だって聞いてます。あと高校時代、音楽の授業でギターを弾くことになり、そこで教師に「キミはギターを弾くのに最適な指先をしているのに、肝心の楽器を奏でる才能がない」と言われました。そんな僕が今回、音楽を題材にしたラノベの感想を書くというのは何かの皮肉でしょうか?(笑)

ユーフォニアムの奏者としての才能に恵まれながらも、進学した音大に馴染めずにいる摩周英司は、恩師の頼みを受け、ある中学校に行くことになる。そこにいたのは四人の女子中学生…一年生ながら才能を見せる四人は、英司と似たような境遇にあり、コンクール常勝の吹奏楽部から爪弾きにされていた。彼女たちに興味を惹かれた英司は、楽器のコーチという立場から、四人の成長を実感することになる。

さてさてこれが初の…と、いえばある意味当然なのだけど、オーバーラップ文庫新人賞作品になります。帯には「プロの奏者が書く、青春音楽ストーリー」とあるので、音楽はからっきしの僕にはちょっとハードルが高いように思えましたが。

正直に言うと、「音楽」に関する描写はサッパリ分からなかった。でも「青春」に関しては存分に楽しめた。

この作品の魅力といったらまずは「音楽」でしょう。物語の随所に音楽に関する描写があります。散りばめられている、というレベルではなく、青春劇を抜かせば大半が音楽のお話です。それをひとつひとつ読んで、「ああ、こういうことなんだ…」と理解して飲み込む作業が結構辛い。最初こそ力を入れて読んでいたけれど、半ばからは真剣に読み込む力を失っていました。重要なテーマだけに、中途半端な描き方が出来なかったのでしょうが、音楽に関しては読み通すことが出来なかったな、と。

「青春」の面については、「英司マジその立ち位置変われ!」と羨むほど良いものでした。性格の違う仲良し四人組み。バランスの取れた四人の女子中学生が、英司というちょっと大人な大学生を軸に織りなす青春。恋と呼ぶにはまだ早い、甘酸っぱさを覚える感情を振り撒く。英司も相手はまだ子供と思いながらも、不意を突かれてはドキッとしたりと、年下好き(あえてこの表現の仕方)の素養はある様子。才能はあるが、自信の持てなかった四人が、英司の指導と温かい心に触れて、成長しやがて目的を達成する姿には感動。この子たち、本当に可愛いなあ。この物語で女子中学生四人の完全な個性を訴えかけるには、少し足りなかったように感じたが、そこは制限のある新人賞作品ですからね。