「ご覧の勇者の提供でお送りします」感想
〈あらすじ〉
ゼルニア王国に突如として出現するモンスターと戦う勇者たちの活躍を放送する人気TV番組——「勇者テレビ」。
騎士団、魔術結社、職人、教会などそれぞれの組織の代表として街を守りながら、組織の宣伝と人気を獲得し、トップ勇者を目指す6人の勇者たちに新たな仲間が加わることに。
伝説の勇者の息子で、学生でありながら、勇者に選ばれたフウトは、学園代表として異例のタッグを組んでデビューを飾ることになるのだが……。そのパートナーは——
「めんどくさいし、勇者だったら、一人でいいじゃん」
やる気のない美少女で!? 波乱のニュー勇者ファンタジー!
田口仙年堂さんの作品はコミカルな作風に合った文体で非常に読みやすい。しらびさんの表紙イラストも作品にマッチしていて、読む前からわくわくしてくる。
何処からともなく現れる謎のモンスター。そのモンスターを討伐する「勇者たち」の活躍を実況付きで映し出す「勇者テレビ」はゼルニア王国で人気を博している。伝説の勇者の息子であるフウトは、王国一の教育機関ファティマ学園と契約し、学生の身分でありながら念願の勇者になる。喜ぶフウトであるが、契約には条件があり、とある人物とタッグを組まなければならない。フウトの相棒となるのは学園長の孫娘にして生徒会長のフィオーレだった。成績優秀な上に美人のフィオーレとのコンビ…しかしフィオーレは実はとんでもない「ぐうたら」であることが判明し、フウトは相棒の扱いに頭を悩ませることになる。
スポンサーと契約して勇者になってよ…つまりそんな感じの世界です。人気のスポーツ選手と契約して活躍し、メディアに露出、彼等の使うスポンサー製品に注目が集まるのと同じで、この世界の勇者たちも学校や企業、騎士団やギルドといったファンタジーらしい組織と契約して勇者となる。そしてモンスターを相手取り、勇者テレビに映りまくるのである。
魔王を倒した伝説の勇者の息子フウトは有望株であり、実力も認められて勇者になるのだが、彼が背負うことになる苦労…それは脱力しっぱなしの相棒にしてヒロインのフィオーレの存在。完璧な生徒会長であるにも関わらず、勇者としてのお仕事となると全くやる気のないフィオーレに悪戦苦闘するフウト。こんなはずではなかった。それでもフィオーレを見捨てず、彼女と共に勇者道を歩もうとするフウトは真面目というか、勇者らしいというか。
フウトの他にも勇者は登場。それぞれの事情、それぞれの立場、それぞれの戦いを繰り広げる勇者たち。勇者と呼ばれるだけあって悪い奴はいない。癖はあるもののみんな気の良い奴だ。キャラクターの陽気さが仙年堂さんらしいコミカルさを生んでいるのだと思う。フィオーレが本気を出してからが本番。フウトさん、ほんと良い奴ですわ。