飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「アクアノート・クロニクル」感想

アクアノート・クロニクル (ファミ通文庫)

〈あらすじ〉
全てが海に覆われた世界。人類は海中に点在する街に暮らしていた。少年ウルはエルアザル帝国の街を本拠に幼なじみのメリル達と小さな運送屋を営んでいた。ある日、ウルは海底に倒れた少女を助ける。アビーと名乗るこの少女は、南方の王家の娘だった。アビーを目的地の帝都に運ぶことにしたウル達だが、敵国の美女ケセンの襲撃に遭う。しかし彼女が憎悪し、殺そうとしたのはウルの方だった! 第15回えんため大賞を驚嘆させた本格冒険ファンタジーが登場!

えんため大賞作品かと思って読んでいたのですが、そうではなくて最終選考落ちの作品だったのね。でもそこで終わってしまうのは「惜しい」と思われるのは分かる、癖はあるけど良い作品でした。

世界は全て海で覆われ、激しい海流の影響により海面に辿り着くことはできない。人々は海の中での生活を余儀無くされ、一体誰が建造したのか…『シェルター』と呼ばれる超大型の箱に街を作り、毎日を過ごしていた。運び屋をしている少年ウルは仕事の最中、海底でひとりの女の子を救助する。アビーと名乗るお嬢様は、何者かに追われているらしいことから、ウルは彼女を目的地まで送り届けることを提案するのだが、その旅路は想像を超える苛酷なものになる。

世界観は実に面白い。人々は地上を知らず、海底での…『シェルター』での生活が普通のことになっている。街から街へ移動するにも生身では不可能で、水中服無しでは生きられない、そんな窮屈な世界。

「王様と話をしたい」という身元不明のアビーを連れて、旅に出るウルたち。運送会社の社長であり、ツンデレ幼なじみでもあるメリルに、変態おデブだが機会を弄らせたら非常に優秀なシバヤスを伴いアビーの目的地に向かうのだが、次々トラブル発生。それもこれもトラブルの種を見つけると首を突っ込まずにはいられないウルの性格…お人好しな性格が災いしている。しかしこの人の良さが、ウルを助けるのだから結果オーライなのかな。

状況と場面がコロコロ転がっていくウル。最早状況に流されているだけにも思えるが、ポイントポイントで危機を乗り越えていく。お人好しの他に、ウル本人も分からない内に異能が備わっており、その力を何処で手に入れたのか、伏線はあるものの具体的な説明のないまま終盤に突入するので、このまま終わってしまうのかと心配になった。幾つか伏線はあったものの、消化不良というか、急ぎ足になってしまっているところが勿体無いかな、と。ウルたちの会話のテンポは思わず笑ってしまうコミカルさがあって好きだ。伏線の数を考えると、シリーズ展開を見据えてるのかなあ。