飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「エンド・リ・エンド(1) 退屈で無価値な現実から、ゲエム世界へようこそ。」感想

エンド・リ・エンド(1) 退屈で無価値な現実から、ゲエム世界へようこそ。 (角川スニーカー文庫)

〈あらすじ〉
自称悪魔のハムスターに導かれ、『主人公補正』つきで異世界転生した御代田侑。彼が生まれ変わったのはゲエムマスターの作ったギャルゲー世界! そこでは、いなかったはずの美少女幼馴染みや義理の妹との同居生活、転校生や学校の先輩とのお出かけイベントが待っていた。フラグ立ちまくりのリア充生活に浮かれていた侑だったが、再び現れた悪魔の言葉がすべてを変える――「お忘れデスか、これは悪魔のギャルゲーなんデスよ!」数多の女の子の中から『メインヒロイン』を探し出す、究極の騙し合い遊戯(ゲエム)がスタート!

この年齢になって実感するのはいわゆる「普通の人生を送る」のは非常に難しい、ということだ。普通に学校に通い、普通に就職して、普通に恋愛して、普通に結婚して、普通に子供を産み、普通に子供と過ごし、そして孫に囲まれて天寿を全うする。これらが「普通の人生」ではない……こんなハードル高けえ人生送れねえっつーの!

そんな愚痴はともかく。
前回に引き続き、オススメのラノベを読んでみようかと思い、手に取ったのがこの作品。前々から作家さんのお名前は聞いてはいたのだけど、なかなか読めず…でも「早く読まないと既刊が出てしまう!」と購入、即読みしました。

「『主人公』になって、人生をやり直してみたくないデスか?」
ハムスターの姿をした謎の悪魔の問いかけに、『主人公』御代田侑が応じた瞬間、ゲエムがスタートする。ゲエムの世界での新たな人生。ギャルゲーでお馴染みの様々な属性のヒロインたちに囲まれて過ごす日常を堪能する侑であったが、悪魔のハムスターがそれを許さない。ヒロインたちの中に、侑と同じようにゲエムの世界に転生した『ヒロイン』が一人だけいる。その『ヒロイン』を探し出して「攻略」すること。『ヒロイン』以外のヒロインに告白したり、告白されたりするとゲームオーバー…その時点で『主人公』と『ヒロイン』は元の世界に戻されてしまう。とある事情から元の人生に戻されるのを恐る侑は、真の『ヒロイン』攻略に乗り出すのだが…。

ゲエムの世界で送る新たな人生。やっと手に入れた幸せな毎日…なのに、NPCのヒロインに告白したりされたり、次々出されるミッションに失敗したりすると、元の人生に送り返される。『主人公』の侑の元の人生。それが負の人生であるのが示唆されているので、ゲエムの世界での日常が明るいものなのだが物語に何処か暗さを感じてしまう。その独特の空気がまた良かったりして、『ヒロイン』攻略に対する危機感が伝わってくる。

またゲエムの世界とはいえ、毎日を楽しく過ごすヒロインに恋せずにはいられない侑。そんな彼が平穏な日常を過ごしながら『ヒロイン』を探し…互いに想っているにも関わらず恋を終えないといけない無念さも心を締め付けてくる。侑は『ヒロイン』との恋を成就するまで、どれだけの失恋を味わえば良いのか。ミステリー要素を加わった奇妙な恋愛ゲエムはまだ始まったばかりだ。