飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「下読み男子と投稿女子 -優しい空が見た、内気な海の話。」感想

下読み男子と投稿女子 -優しい空が見た、内気な海の話。 (ファミ通文庫)

〈あらすじ〉
平凡な高校生の青は、実はラノベ新人賞の下読みのエキスパートだ。そんな彼は、ある日応募原稿の中に、同じクラスの氷ノ宮氷雪の作品を見つける。""氷の淑女""と呼ばれる孤高の少女が、フォント変えや顔文字だらけのラノベを書いて投稿している!? 驚く青だが、その後ひょんなことから彼女の投稿作にアドバイスをすることに。評価シートに傷つく氷雪をあたたかく導き、世界観、キャラ設定、プロットと、順調に進んでいくが……。爽やかな青春創作ストーリー!..

最高に面白かった!
これぞ野村美月さんですよ!
題材になっている「新人賞」のお手本となるような作品。シリーズ作品としてでなく、この1冊でキレイに纏め上げているこの完璧な物語の作りに感動しました。

高校生・風谷青にはある秘密がある。クラスメートの誘いを断り、青がやることはライトノベル新人賞の「下読み」の仕事。ゲーム業界で働く叔父の手伝いをする形で始まった下読みは、本を読むのが大好きな青のライフワークとなって三年が経っていた。ゴールデンウイークも下読み作業に当てていた青は、ひとつの投稿作品のプロフィールを見て驚くことになる。いかにもな長文タイトルにフォント芸を繰り出す作品を新人賞に投稿したのは、青のクラスメート……「氷の淑女」と呼ばれ冷たいイメージを持つ美少女・氷ノ宮氷雪だった。あまりのイメージのギャップに困惑する青であったが、このことがキッカケとなり、青は氷雪の物語作りに協力することになる。

どんな物語でも楽しめる。昔は僕もどの作品を読んでも感動したものですが、今ではこの有様ですよ。素直に青のある種の「才能」……純粋に物語を楽しみ続けること、そして物語について真剣に考え抜くことができることを羨ましく感じる。

青と氷雪。読む側と読ませる側の恋の物語。「新人賞の一次選考」を突破するため、氷雪にアドバイスすることになった青……急接近する二人は次第に互いのことを意識するのだが、これがなかなか不器用で、こと物語についてなら真っ直ぐ想いをぶつけられるのに、自分自身のこととなるとサッパリなのがもうむず痒くなるね。なんで二人が惹かれ合うのか、それをしっかり描いているので二人の良さが分かり、読んでるコッチとしては「さっさとくっつきやがれ!」と言いたくなる。

氷雪の作品、氷雪の創り出す物語を世の中に示したい想いと同時に、クラスメートが「冷たい」と誤解する氷雪のイメージを覆したい。本当の氷雪を見て貰いたい気持ちを抑えられなくなる青の衝動。この青の青臭さこそがこの作品の魅力。そして最大の破壊力を発揮する。青の想いを見てるとコッチが恥ずかしくなるよ!だがそれが良い。