飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「月とライカと吸血姫」感想

月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)

〈あらすじ〉
いまだ有人宇宙飛行が成功していなかった時代。ツィルニトラ共和国連邦の最高指導者は、人間をロケットで宇宙に送り込む計画を発令。その裏では、実験飛行に人間の身代わりとして吸血鬼を使う『ノスフェラトゥ計画』が進行していた。閉鎖都市で訓練に励む宇宙飛行士候補生のレフは、実験台に選ばれた吸血鬼の少女、イリナの監視係を命じられることになる。上層部のエゴや時代の波に翻弄されながらも、ふたりは命懸けで遙か宇宙を目指す。宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が紡ぐ、宙と青春のコスモノーツグラフィティ。

このライトノベルがすごい!2018」文庫版にて第4位になった本作。その前から良い評判は聞いていたので安心して読みにいけた。余談ですが、読み終えてからタイトルの「吸血姫」を「ノスフェラトゥ」と読むことに気づきました。横文字ルビタイトルあるあるです。

二つの大国。ツィルニトラ共和国連邦とアーナック連合王国は人類未踏の地である宇宙を目指し、熾烈な開発競争を繰り広げていた。共和国が人工衛星ロケットと共に犬を打ち上げ、続いて月の調査に成功する。次の目標は人類が宇宙に上がること……連合王国よりも先に有人ロケットを打ち上げたい共和国は、実験のため人間の代わりに吸血鬼を送り込む「ノスフェラトゥ計画」を発動。共和国の宇宙飛行士候補生・レフは実験体である吸血鬼の少女・イリナのお目付け役に選ばれるのだが……。

イラスト担当のかれいさん、コミカルな感じのイメージがあったけど、この表紙は素晴らしいなあ。タイトルをしっかり一枚のイラストに落とし込んでいる。良きかな良きかな。

はい、それでは感想です。
「吸血姫」というタイトルを見てイメージした内容とは随分違かった、というのが最初に思ったこと。吸血鬼を扱う題材として宇宙を持ってくるのは素直に驚きました。作中での吸血鬼の設定も、血を吸うことがある以外は、まあそれほど人間と大差がないというもの。吸血鬼に向けられる差別と偏見。主人公のレフもまたその一人であったが、可愛く、また意志の強い吸血鬼少女のイリナと接する内にその考えを改め、それどころか彼女を守りたいと思い抱くようになる。

青春。これはレフとイリナの青春劇。そして二人が追いかける宇宙という夢。とてもとても青臭い物語で、丁寧の綴られた言葉たち……ページが進むごとに二人の距離が縮まって行く様をニヤついた顔で追いかける。でも青春や夢だけで生きられるほど、レフとイリナの周辺は穏やかではなく、国家の謀略、あるいは勝手な都合というのか。二人はその渦に飲み込まれようとする。人と吸血鬼。分かりあい、心を繋いだレフとイリナの情熱溢れる青春に心が熱くなってくる。