飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。12」感想

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。12 (ガガガ文庫)

〈あらすじ〉
バレンタインデーのイベント、水族館での雪の日を経て、自分たちが踏み出すべき一歩を定める八幡たち。そんな奉仕部に、ある大きな依頼が持ち込まれる。その依頼に対して、雪乃が決意と共に出した答えとは…。―たとえ、その選択を悔いるとしても―。時間の流れがいつか自分たちを大人にするのかもしれない、出会いと別れを繰り返して人は成長するのかもしれない。でも、いつだって目の前には「今」しかなくて―。それぞれの想いを胸に抱えながら、八幡、雪乃、結衣が選ぶ「答え」とは。新たなる青春群像小説、物語は最終章へ。

俺ガイルの感想を書くの、およそ5年振りです。前巻の感想は長男が生まれた直後に書いているようなので、隣で大騒ぎしている息子が成長してきた時間、俺ガイルに触れてこなかったということ。

こう書くと何かあるのかと思われそうだけど。そもそも今年に入って感想を定期的に書き出すまで、日常に余裕がなかっただけ。たったそれだけ。そしてこの余裕も、いつまでのことか。物事はいつだって変わりゆく。特に人と人との関係は……。

八幡、雪乃、結衣の関係は明確に動き始め、変わり行こうとしている。永遠に思えた心地良い人間関係。それもいつかは違うカタチになってしまう。高校生という限られた時間の中で形成される特殊な人間関係は、いつかは終わる。

陽乃は三人の関係を的確に見抜いていた。共依存関係。互いが互いを補い合い、頼り合うことでできた強固な繋がりは、いつか終わりがくることが決まっているのなら、その歪な結びつきを解かないとならない。だからこそ雪乃は自ら行動をして、自分自身を母親に証明しようとしている。

他人に頼られること。それを気持ちが良いと感じるのか、面倒だと感じるのかは別れるところだと思う。八幡の決定的な言動は雪乃か結衣が苦悩した末に起きていることを考えると、陽乃の言っている通り。三人の関係がそれぞれの独立を阻んでいるのなら、何処かで何らかのこの青春劇に決着を付けなくてはならない。何も決めなければ、ただ人間関係の距離だけが開いて、やがて溶けるように消えていく。三人の青春の行き先は何処にあるのか。その終わりは、僕がこの巻を読んでいる時にはもう決まっているのだ。