飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「“若紫” ヒカルが地球にいたころ……(3)」感想

“若紫” ヒカルが地球にいたころ……(3) (ファミ通文庫)

“若紫” ヒカルが地球にいたころ……(3) (ファミ通文庫)


「バージンをもらってくれるの?」という9歳美少女の衝撃的な台詞にもう笑うしかなかった。

今回のターゲットは小学校四年生ながら将来有望なのが直ぐに分かる美少女、紫織子ことしーこ。ヒカルがしーこの『バージン』を予約している羨まし…ごほん、けしからん事実に怒り心頭の是光。だが、このしーこ。一筋縄ではいかない。最初は年相応の無邪気さで是光を誘い(誤解を招く表現)、写真を撮って脅迫してくるとんでもない9歳児だった。更には自殺してしまった父親と善人故に詐欺に合う祖父の影響で「正直者はバカを見る」と刷り込まれ、幼さを武器に詐欺行為を繰り返す始末。そんな問題児の彼女を是光を「落とす」ことが出来るのか、というのが『若紫』の話である。

無茶苦茶な行動に出るしーこに振り回されながら、もうひとつの問題(?)である『式部の告白と好意』にも振り回される是光が描かれているため、今までの物語よりもコミカルな印象を受けた。学校で頭条先輩とのホモ疑惑を持ち上がったかと思うと、今度はしーことの関係(またしても誤解を招く表現)をリークされてロリコン扱いされる是光の哀れっぷりは腹を抱えて笑うところ。告白したものの最後でヘタレを見せてしまった式部は、是光のホモ疑惑とロリコン疑惑、そして彼に接近する葵の存在によってヤキモキ。その結果、暴挙としか思えない行動に出て是光を果てしないまでに混乱させる。是光と式部。『素直なんだけど素直じゃない』二人のやりとりとそれぞれの心の葛藤がこれほどまでに面白いモノだとは。これを悶えずに読める奴は人間じゃねえ…!

そんなニヤニヤの止まらない前半から、しーこの唯一の肉親である祖父が倒れたことから展開は一変。行き場所も心の拠り所も失ったしーこを是光一家が面倒を見ることになり、気を張って誰にでも相対していた彼女が『子供らしさ』を見せ始める。ヒカルとの思い出話をしながら次第に距離を縮めていく是光としーこ。是光に添い寝をしてもらい、そのぬくもりを感じて眠るしーこが愛おしい。とはいっても、そんな時間は長くは続かず『父親の死の真実』を明かすため行方知れずになる。そのしーこを探す手助けをしてくれた式部、ひいな、葵、そして意外な人物である朝衣。彼女たちの助力を得て、ようやくしーこを見つけ、ヒカルの言葉により真実を照らし出す是光ではあったが、その結末の行く末に納得がいっていない。『本当の父親を見つけ彼に任せて終わり』というのはあまりに是光らしくないではないか。同様の疑問を抱いていたヒカル。そんな二人の心を後押ししたのは、痛烈な朝衣の言葉。ほんと、朝衣は根は良い奴だ…。

こうして読者の望んだ最高の終わりを迎える訳です。しーこを引き取り、まさかの子育ての後、彼女は『若紫』になってしまうのか。仲を修復した式部と、最後の最後に爆弾を投下した葵とで是光争奪戦が激化する模様の中…次回のタイトルは『朧月夜』で属性は『兄嫁』?『愛人』?是光が振り回されるのをニヤニヤしながら読めるのなら何でも良いよ!