飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「魔法使い、でした。1」感想

魔法使い、でした。1 (講談社ラノベ文庫)

魔法使い、でした。1 (講談社ラノベ文庫)


口絵の漫画を読んだときは『設定オチ』なのかと思ってました。が、とんでもない。
しっかりした内容のファンタジーでした。うん。こういう話が僕は大好きだ!

有名クランに所属し『赤炎のバズ』の二つ名で知られる強力な魔法使いバズ。ではあるものの、この世界の魔法使いは清らかな身体…『童貞』『処女』でなくてはならず、そのため女遊びも出来ないバズは自分のことを放って女遊びに勤しむクランの仲間を内心では毒づきながら、さっささとお金を貯めて引退して可愛いお嫁さんと田舎暮らしを夢見ていた。
そんなバズが強烈な眠気に襲われた次の日に、溜め込んでいた金と共に魔法の力を失う。身に覚えがないのに『脱・童貞』してしまい魔法使いではなくなったバズは仲間に見捨てられ、それでも『大切なモノ』を取り戻すため、幼なじみっ娘のキリルに頼み込み、僅かなヒントを元に『大切なモノ』を奪った人を追う旅に出る。

名を馳せる魔法使いであることから他者を見下しお金だけしか見ていないロクデナシのバズが、魔法もお金もなくなったことから今度は役立たずになるも、冒険を通して仲間の大切さを知り心を入れ替え、みんなのために戦い始めるまでの流れは素晴らしい。バズに対して当たりの強いキリルではあるも、ロクデナシで役立たずで文句しか言わないバズの有様を見てはそんな態度にもなるよなあ。それが「好き/憧れ」の幼なじみであれば。バズとキリルが道中で出逢う美女盗賊シーマと女の子にしか見えない魔法使いニアも個性的で、特にニアはヒロインの立場であるキリルよりも『ヒロイン』らしい扱いされてて笑う。その野盗に襲われた仲間達を救うために、シーマから譲り受けた貴重な『ライフル』(銃)を新たな武器に戦う元魔法使いというのは皮肉が効いてて良い。新しい武器を手にして自信を取り戻し、また仲間達との絆を深めたバズが、かつての仲間に出逢った際に「クラン追い出された存在」としてではなく対等に向き合う姿は人が変わったようだ。また人が変わった、というか強気なキリルがちょこちょこ見せる乙女のような態度は可愛い。最後に魔法が必要になる局面で、その乙女が最大の効果を発揮するとは。

巻数表記があったのでもしやと思ったが、やっぱり今回だけでは終わらず冒険の旅は続く。この四人のパーティーが好きなので次回も楽しみ。