飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「彼と人喰いの日常 2」感想

彼と人喰いの日常 2 (GA文庫)

彼と人喰いの日常 2 (GA文庫)


日常から弾き出されてしまった少年と、人食い妖怪の共同生活を描いた物語。
今回は退魔省に民間協力者となることで「人に害する意図がない」を示そうと、十夜と黒衣は連続殺人を起こしている『妖刀』を追う。

親公認の同棲生活を送っているようにしか見えない十夜と黒衣。どう考えてもラブコメの始まりにしか思えないのだが、一皮剥けばそこにあるのは非日常。『人喰い』を処分しようとする退魔省の過激派である朱音の襲撃を難なく凌いだ黒衣ではあるも、穏便派の田中の提案により無用な争いを避けるため、外部協力者として契約することに。退魔省に協力してくれれば『人喰い』への代償を用意してくれる条件までつくことを考えると、退魔省は『正義』を行う真っ当な組織ではないのが分かる。街で発生している連続殺人に『妖刀』が関わっている可能性があり、その容疑者を監視する依頼を受けた十夜と黒衣、そして二人を監督する朱音。二人を嫌う朱音にあれこれ言われながら、依頼を…容疑者である十夜の後輩のイジメられっ子に接触するのだが、いわゆる『イジメられっ子』像からかけ離れた真白は、イジメから救ってくれた十夜と黒衣に明るい表情で懐く。あまりの真白の明るさに「イジメられたことに対する復讐」を試みるようには見えず、真白が『妖刀』を持っていることを否定したい十夜の気持ち。が、その想いを裏切る真白の…『妖刀』による凶行を、彼女の死によって終わらせるのは、前回に引き続き後味が悪すぎるよな。真白を黒衣に喰わせて生け贄にしようと提案する朱音の言葉を、我が儘にしか聞こえない感情論で抗い、最後には実行に移して真白を『妖刀』から解放したのは救いだった。

このシリーズの今後の流れは退魔省の依頼をこなす十夜と黒衣のコンビという形で行くのかな。また朱音も言っていたことだが、生け贄を退魔省が用意してくれるとはいえ、自分が生きるために他人の命を犠牲にする覚悟と十夜は戦わないといけない。それと記憶を失った立夏から逃げずにしっかり退治する様も描いて欲しいなあ。