飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「一年十組の奮闘 クラスメイトの清浄院さんが九組に奪われたので僕たちはクラス闘争を決意しました」感想

一年十組の奮闘 ~クラスメイトの清浄院さんが九組に奪われたので僕たちはクラス闘争を決意しました~ (MF文庫J)

一年十組の奮闘 ~クラスメイトの清浄院さんが九組に奪われたので僕たちはクラス闘争を決意しました~ (MF文庫J)

〈あらすじ〉
学生のすべてが何らかの“能力”を有する特別な学校、私立天命学園。
「人をなごませる程度の能力」を持つ花咲皆人は、今日も茂や幸子ら一年十組の仲間たちと、バカバカしい、だけど最高に楽しい日々を過ごしていた。
「サッチン、てめえ! スパッツの上にパンツ穿いてんじゃねえかッ!」「ふぇ、来る途中で誰かに見られちゃったかも……? どうしよ、お嫁さんにいけないよう」「ここでみんなに見られたことは気にしないんだ?」「じゃあ皆人くん、こーこのことお嫁さんにしてくれる?」「ごめんなさい」「はやっ」
――だが、“吹きだまり”の九組生徒に委員長の荒浪が怪我をさせられ……?
熱い絆が炸裂するハイテンション・クラスバトコメ、堂々開演!!

俺に見せてくれ、落ちこぼれと罵られ続けたお前らの団結力を…仲間を想う力って奴をよ!!
思わず熱いセリフを言いたくなるほど燃えてしまいました。
誰もが何かしらの能力を持つ私立天命学園。その底辺に位置する『一年十組』が大切な仲間を取り戻すため、全力全開で上位クラスに挑む。『手を触れずにスカートを捲ることのできる能力』『モノを食べ続けなければならない能力』など、「それって能力って言えるの?」と首を傾げてしまうほど有効活用しようのない能力を持つ『一年十組』の面々。しょっぱい…なんてしょっぱい力なんだ。
そんな『一年十組』のリーダー格であり主人公の皆人の持つ能力は『37cm以内の人をなごませる』というもの。役に立たないように思える力ではあるが、力は宿るべき人の適性を見ているのか…苦しんだり悩んだりしているクラスメートがいると、ささっとパーソナルエリアに滑り込みコミュニケーションを取って穏やかな気持ちにさせてくれる。そしてこの力を持つ皆人は単に穏やかなキャラかというとそうではなく仲間のために真剣に怒ることのできる熱い男。それを知っている仲間たちは彼が近づいてきても不快には思わない。確かに力の効果はあるだろうが、それを抜きにしても彼が横にいると和んでしまうのだ。
この作品の凄いところは『一年十組』のメンバー総勢12人が序盤ドカドカ登場して混沌とした状況になるのに、それぞれしっかり個性を発揮して読者にキャラを掴ませるところだ。あまりの個性の強さに思わず話を持っていかれてどんどん違う話に行ってしまうくらい。まあ皆人がしっかり話を戻してくれるから助かるんだけど。
個性は揃いだけど仲間想いな『一年十組』の中でひとり馴染めず壁を作っているのがヒロインにして誰もが認めるほど美少女である『お姫様』ことマリカ。自分の美しさが人を惹きつける…そういう能力を持つ彼女は、その力故に人と距離を取り、人を信用しない。そんな彼女を奪ったのは横暴な人が多い9組。勝負に敗れ、9組にマリカを奪われた『一年十組』はしかし彼女を見捨てることはせず、クラス全員…およそ力にならないであろう全員の能力を合わせて9組に戦いを仕掛ける。ひとりひとりの力は弱いけどみんなで挑めば大きな力になる。『一年十組』の戦い…奮闘の末、マリカを奪還。ここで始めてマリカとクラスメート、仲間になれた。
『一年十組』の受難は続くのか。9組との戦いを終えたばかり彼等を見下ろす者たちが。さて次はどんな能力を持つ者が現れるのだろうか…。