飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「瑠璃色にボケた日常」感想

瑠璃色にボケた日常 (MF文庫J)

瑠璃色にボケた日常 (MF文庫J)

〈あらすじ〉
紺野孝巳は、霊障に悩まされる高校一年生。
ある時、校内でも有名な霊能者の少女、有働瑠璃の所属する『お祓い研究会』を訪れるのだったが――おはらいではなくおわらい。そこはなんと『お笑い研究会』だった!
謎の会話から孝巳にセンスありと認めた瑠璃は、その場で孝巳を入部させてしまう。
さらに“霊導師”を名乗る学校一の美少女、鴫原翠まで現れ――
「フン、『霊感女』の称号なんて翠にくれてやるさ。私には『爆笑王』の称号と、『ミス青鶴高』の称号があればそれでいい」「その二つは同時に成立するのか?」
――いま、霊と笑いに囲まれた非日常な青春が幕をあける!
美少女にツッコミまくる青春系フルスロットルコメディ!

新人とは思えないほど話の持って行き方・作り方が上手い。
「怨霊」と「お笑い」という、パッと聞いて相性が良いとは思えない題材を上手く料理している。暗い話になり、そのまま気持ちが沈み込んでしまう流れに突入するところを、コメディ要素で上手に浮上させてくれる。

中学時代は天才球児と騒がれていた紺野孝己は、大怪我が祟り高校に上がった今では不良と言われるほど落ちぶれていた。
そんな彼に幽霊が取り憑き、毎晩枕元に立って悩ませる。困った孝己は、学校で噂になっている「おはらい部」に相談に行くのだが、そこで待ち受けていたのはボケ倒しの美少女…「お祓い」ならぬ「お笑い」部の部長にして霊媒師の有働瑠璃であった。

何をするにもお笑いを持ち込む瑠璃と知り合い、天性の才能なのかツッコミがやたら上手い孝己を気に入り、災難なことに「相方」呼ばわりされるようになる。様々な重い事情を背負って…あるいは取り憑いた人間の意思を受けて、この世に留まる幽霊に相対することになる二人。しんみりするオチになるのを漫才のような会話で和ませてくれる展開が売り。日常では瑠璃の話術に手玉に取られる孝己を見ていると、周囲が彼を「不良」と言うのがとんでもない誤解であるのが分かってくる。

自分の気持ちに正直な孝己は、幽霊たちの背景を知って、感情的になって行動する。激昂する孝己に振り回される役目を担うのが、瑠璃の幼馴染にして天才霊媒師の鴨原翠。幽霊を道具のように扱う瑠璃に反発する真面目な彼女であったが、孝己と接する内に、頑なな姿勢を少しずつ軟化させていく。ラブコメ要因としては瑠璃よりも翠の方が適任。

過去に起きた惨劇によって、すれ違い続けた瑠璃と翠を再び引き合わせた孝己は、仲裁に入ってその問題の一端を解決させる。あまりにも強引な展開であったが、そこに至るまでの孝己の行動を考えると「彼ならやれる」という確たる思いを抱く。全ての前振りに対して、全力でツッコミを入れたカタチなんだよねえ。

終わり良ければ全て良し…となるのかどうか。この物語には続きがありそうだし、次の話も実に面白そうな展開が待ってそうだ。続き想定でも、こういう締め方は好きだなあ。