飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「オトメ3原則! 4」感想

オトメ3原則! 4 (オトメ3原則!シリーズ)

〈あらすじ〉
人間の心を再現する0システムを持つロボット、ラブは初めて出会う同型機カムイの手で半壊されてしまう。
ラブを回復させる為に、彼女のマスターである本気は、幼馴染みの遙と絶縁状態の母親に連絡を取ろうとする。
一方、所属するロボロボ部は活動停止の憂き目にあい、ロボコン出場が危ぶまれていた。そんな中、奇跡のように目を覚ましたラブだったが……
愛と科学のSF風学園ラブコメ、激震の第4幕!

僕たちにいつも無邪気な笑顔を向けるラブの姿はそこにはない。
でも、この表紙のラブの微笑む姿に希望を抱く。マジが、家族が、仲間が、彼女を救おうと動き出す。

初めて出来た友達・神楽さん…カムイに破壊されたラブ。衝撃的な展開のまま終わった3巻直後から話は続き、ロボロボ部のメンバーに加えて勇希も加わり、ラブ修復に全力をあげる。そして本当の物語の始まりはラブの身体が修復されたところ開ける。

心の不在。失われたラブの心。
ロボットに心を与える0システムとは一体何なのか?その疑問は常にマジたちと共にあったが、それを知る父親とは連絡が取れず、カムイは多くを語らない。
ついに登場したマジの母・美鈴。0システムを知る者、ラブの心を救う者として期待と不安が入り混じる中、呼び寄せた美鈴は、しかしマジの想いに応じることはなかった。

0システム。これまでラブの温かさに触れてきたマジと遥、そして仲間たちにとって、それは彼女の象徴…心であった。でも母として、科学者としての美鈴にとって0システムは不可解極まりない危険な代物でしかない。「ロボットでありながら人を傷つける0システム搭載機」良き隣人で在り続けるロボットと人との関係性を壊しかねないシステム。美鈴がラブ…と、いうよりも0システムを危険視する理由は、至極全うで反論の余地はないように思える。

でも、マジたちにはどうしても譲れないモノがある。ラブとの日常。彼女と苦楽を共にしながら笑い合う日々。何よりその日常を大切にしていた遥の想いは、同じようにラブを救いたいマジの心をより大きく突き動かし、可能性を手繰り寄せる。

ラブを救うために動き出したのは、勿論マジと遥だけではない。合理的な判断をする美鈴に対抗するには、マジが0システムを扱えるに足る人間であることを証明すれば良い。その考えの下で動き始めた仲間たち。明里は歩行用ロボットがマジの可能性を示すモノとして、最大限魅せられるようにと身を呈して実験に加わり、意外な人物であるが、慎太郎がカムイと0システムのブラックボックスについて取引をする。キャラクターに役割を振り分けて、それぞれの目的達成のために活発に動かし、最後には同じゴールに収束していく展開は胸を熱くする見事な運びだったと思う。

ひとりひとりの頑張りが、努力が、ラブの笑顔を取り戻すために結晶化していく。その先で起きたモノは決して奇跡なんかじゃない。みんなの温かい想いの結果なんだ。

ラブの心を取り戻すことに成功した。しかしその代償というのか、あるいは罠と言うべきか。カムイの前に曝け出すことになってしまった最後の0システム『プロトⅢ』を彼女がラブ含め見逃すはずがない。彼女の力に対抗する大穴が、もしかしたら慎太郎になるのでは…?
またマジの父親の失踪は、何を意味するのか。募る不安に胸騒ぎを感じながら、次の物語を待つ。