飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「リーディング・ブラッド 最強の血統」感想

リーディング・ブラッド 最強の血統 (ファミ通文庫)

〈あらすじ〉
美しい彼女の瞳には"適性者の紋章"があった――。
相坐凪紗には使命がある。それは高校卒業までに嫁を探して子を成すこと! 相坐家は"武士"の異能力で鬼神を封印している。その力を継承する子を数年内に作れなければ、いずれ鬼神が復活し、世界は滅びるだろう。
嫁を探し必死でナンパを繰り返すも、失敗続きの凪紗の前に、ついに全ての理想を満たした少女・魅花が転校してきて……。
世界のために素敵なお嫁さんを探す血統アクションコメディ開幕!

田尾さんが競馬大好きなのは、よぉ〜く分かりました!(笑)
『ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!』を読み逃してしまい、その後の作品がノベライズ続きだったこともあって、なかなか手を伸ばせなかったが、ようやくオリジナル新作発売ということで読ませて頂きました。

平凡な高校生・相坐凪紗が背負う宿命。
それは「10代の内に子孫を残し、血脈を繋ぎ、世界を滅ぼそうとする鬼神を相坐家の力で封印し続ける」こと。しかも子を成す相手は誰でも言い訳ではなく、五千人にひとり、瞳に浮き上がる特殊な紋章を持つ者となければならない。
なんという人生ハードモード。
世界の命運と両親からのプレッシャーを感じながらも、未だ「彼女いない歴=年齢」の凪紗は、ついに運命の女性と出逢う。
金髪の育ちの良い美少女・魅花は、転校生として凪紗のクラスにやってくる。瞳に紋章を宿し、理想を満たす魅花との距離が縮まる中、凪紗は彼女の出生…血統が、自分たちの敵である『鬼の一族』であることを知る。

世界のために特殊な条件を満たす女性と子供作らなければならない凪紗と、『鬼の一族』でありながら脆弱な力しか持たず劣等感を抱いている魅花との、己の血統に縛られて生きる二人を軸に物語は進行していく。女性とお近づきになりたいが奥手のためそうはいかない凪紗が、魅花に惹かれて行く理由が、最初は紋章の保有者であったことが強かっただろうが、後半になるに連れて、血統の呪縛なく、彼女に惚れ込んでいく様が、ラブコメ要素満載で描かれることもあり、非常に読みやすい。また一読者としても、魅花の柔らかい存在感は癒しだ。

基本的には凪紗と魅花、二人の恋の行方を追いかける物語になるのだが、脇を固める他のヒロイン…実妹の紗優と幼馴染の奈巳もキャラクターが立っているものの、悲劇的な設定が切ない。紗優に関しては「もしも凪紗が相手を見つけられなかった時の切り札」扱いされていて、しかもそれを好意的に受け入れる兄愛があるのだが、そのポジションは魅花に掻っ攫われ、また初恋の相手で脈もあった奈巳は紋章がなく資格がないことから恋人候補から外れるという、どちらにしても、凪紗よ、血統に振り回されずもっとしっかりしろと言いたくなる。

鬼神を封印する血統であり、鬼を狩るものでもある凪紗。紋章を持つものとキスをすることで、未来に授かる二人の子供を現世に召喚して戦わせる設定は、これから先、魅花と紗優以外の可能性を提示出来、ラブコメ的にとても美味しく揉める要素になりそうで楽しみである。
そんな力を行使しながら、自分自身に流れる血に苦しむ魅花を救うため、凪紗は戦う。自分もまた血に苦しむ者だから…魅花の苦しみを理解できるのは自分だけだから、と。血統に雁字搦めにならず、生きて行こう。凪紗と魅花の成す未来は、世界の血に支配される者に対して、どんな可能性を示すのか…と思っていたら、そうは問屋が卸さない。カップル成立したら物語が終わっちゃいますからー!残念!おかしな具合にすれ違う二人は結ばれるのか、次回が楽しみ。