飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「疑心恋心」感想

疑心恋心 (ガガガ文庫)

疑心恋心 (ガガガ文庫)

〈あらすじ〉
八十島 樹はしゃっくりに悩まされていた。様々な俗信を試したがしゃっくりは止まる気配がない。
そこに、なにをやっても止まらないという噂を聞きつけた、おせっかいな友達が『絶対にしゃっくりを止めることが出来る人物』のところまで連れて行ってくれるという。
だが案内された先は、ここの生徒なら誰もが恐れる“呪われた地学準備室”。
部屋を覗くと中にいたのは異質な雰囲気を纏った美少女だった。思えば、この瞬間から僕の人生が変わったのかもしれない。
そう、呪われた地学準備室の主・釣見朱鷺子に出会ったことで――――。

「食べてすぐ横になると牛になる」「驚かせるとひゃっくりが止まる」「喉にネギを巻くと風が治る」「夜口笛を吹くと蛇がやってくる」
誰もが聞いたことのある迷信や噂に疑似科学、民間療法。
俗信、と呼ばれるこれらを現実に引き起こせるとなると、いったいどうなるのだろうか?

主人公の八十島樹はひゃくりが止まらないことから、お決まりの俗信を試すのだがやっぱり止まらない。
いつになっても止まる気配を見せない樹のひゃっくりをぴたりと止めたのが、一つ下の後輩である釣見朱鷺子だった。真っ白な長い髪をした後輩は「呪われた地学準備室」で困っている生徒の相談に乗り、多くの人の悩みを解決してきたのだが、その解決方法全てに俗信が使われている。「俗信で人の悩みを解決できる訳がない!」と樹は、朱鷺子が詐欺を働いている違いないと決めつけて彼女の行動を監視し始めるのだった。

結論からいえば、朱鷺子は『俗信を現実にする』特殊な力の持ち主。朱鷺子の詐欺現場を押さえようと意気込む樹には申し訳ないが、なんのトリックもない。
『俗信を現実にする』力があれば、確かに便利だ。ひゃっくりどころか風邪だって立ちどころに治すことができる。地味だが役に立つ。朱鷺子の力のことを理解してきて、彼女に冷たくされながらも挫けずに準備室に通い続ける樹もそう思っていた。

とんでもない間違いだ。
朱鷺子の人助けは、贖罪のために行われていた。使い方によっては便利な俗信の中には、勿論危険な俗信も含まれている。人を傷付け、下手をすれば殺してしまう俗信。
過去、自分が引き起こした俗信による事件や、力を多くの人間に利用された詐欺。今も尚、朱鷺子を苦しめ取り巻く過去を打ち払えるのは、彼女と一緒に居続けた樹、おまえしかいないだろう!

始まりは小さな出来事であったが、次第に大きな事件へと発展していき、そして最後には綺麗に収束していく。
上手く纏まっていて良い物語でした。また次も楽しい物語を作ってください。