飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「殺戮のマトリクスエッジ」感想

殺戮のマトリクスエッジ (ガガガ文庫 さ 6-1)

〈あらすじ〉
西暦20XX年。旧東京湾上に建設された次世代型積層都市トーキョー・ルルイエ。この都市には、電脳を喰らう獣がいる。それは、電脳ネット上、どこにも存在しない、人喰いの化け物どもだ。そして、彼・小城ソーマは奴らを狩る。鮮血と電子の満ちる裏路地で、彼は独り、獣を狩る。ある晩出会った不思議な少女と共に、彼は都市の大いなる陰謀に巻き込まれ、翻弄される。
ライアーソフト「スチームパンクシリーズ」や『Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ』を手がける桜井光が紡ぎ出す、サイバーパンクアクション始動!!

お恥ずかしながら、桜井光さんのお名前を目にすることはあっても何を書いている方かは知りませんでした。ラノベ以外のこととなると途端何もキャッチできなくなるのが僕の特化型アンテナです。

近未来。電脳化された人々が生活する都市トーキョー・ルルイエ。その都市には人々の間で囁かれる噂がある。電脳を喰らう化物『ホラー』。単なる噂などではなく実在する『ホラー』を狩る少年・小城ソーマはひとりで怪物を屠ったある日、奇妙な女の子と出会う。他人に存在を知られたくなかったソーマであるが、気絶していた少女を放っておくことはできず、連れ帰ることになるのだが、意識を取り戻した少女は名乗ってもいないのに、ソーマの名前を口にする。しかも少女ククリとの電脳アカウントが何故か癒着してしまい、彼女と離れることも適わなくなったソーマは、ククリとのおかしな共同生活を始める。

頭の中に常にインターネット接続されたコンピューターがある感覚ってどんな感じななのかな? 某人気アニメ映画にも登場するけれど、恐ろしく便利な反面、情報の波に人格が晒されることによって自分を保てなくなるのでは、あるいは自分を乗っ取られてしまうのでは、という不安が付きまとうと思う。

電脳。そう呼ばれるモノを埋め込み、生活する人々。便利であるが、それを害する存在として出現する謎の怪物ホラー。そのホラーを孤独に狩り続け、「人らしさ」を喪い欠けていた少年ソーマが出会う無邪気な少女ククリとの交流は、少年に人の温かさを示してくれる。

正直な話、冒頭から約40ページ。なかなか物語が始まらず、ヤキモキした。話もこの40ページの間、あっちにいったりこっちにいったりしたから、余計に先が読みにくい。それでもククリを助けてから、ソーマの日常が始まると一変、クラスメイトの可愛い女の子シノを加え、物語に華が添えられる。また電脳バトル、ホラーとの戦いは目に見える物理的な戦いと、目に見えない電子的な戦いが同時に繰り広げられ、なかなか盛り上がる。ククリ対する想いが大きくなればなるほど人間味の増すソーマ注目して読んで頂きたい。