飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「けもののかんづめ」感想

けもののかんづめ (ガガガ文庫)

けもののかんづめ (ガガガ文庫)

〈あらすじ〉
僕こと、中津川司狼には出生の秘密がある。
それは僕が生まれてすぐにいなくなった父親が"女性にしか見えない"ことだ。
母子家庭に暮らす僕は少女のような外見がコンプレックスで、男らしくあろうと柔道部に所属している。
穏和な性格もあって強くはないが、ごく平凡で楽しい高校生活を満喫していた。
そんなある日、僕は大地から立ち上る光の中から現れた美しい少女にいきなり“兄さん”と呼ばれることになる。少
女は新たな秘密”を抱いた実の妹だったのだ!
妹と、彼女に使役される兄が巻き起こす“ケダモノ系バトルラブコメディ”ここに開幕!

掴みは非常に良くて話が何処に向かう先が分かりやすい面がある一方、設定周りの造語が読みにくく頭の中に浸透しない感じが終始付き纏った。訳も分からず非日常に放り込まれ
混乱する主人公と同じ心境を、神の視点に立っているはずの読者も味わってしまったというか…出だしが面白いだけに勿体無い。

女の子のような容姿を持つ中津川司狼は恋をしていた。相手は中学生の時から友達付き合いがあり、今は司狼が所属する柔道部のマネージャーでもある滝沢撫子。脈はあるのだが、しかし勇気の持てない司狼は告白を先延ばしにしている。そんな青春に悩む司狼に訪れる転機。司狼の前に突如姿を現したのは金髪美少女のカレン。異世界からやってきたカレンは、司狼の実妹だと言うと…キスをしてきた。カレンの力によって金色の狼へと獣化した司狼は、異世界から潜り込んだ化物たちを駆除することになる。カレンに従われて。学園に巣食う化物たちに対して、司狼とカレンの兄妹はどう立ち向かって行くのか。

友人以上恋人未満の関係を築いている司狼と撫子のやり取りにニヤニヤできる序盤の流れは非常に良い。これが司狼の日常だ。そこからカレンが引き連れてくる非日常が姿を現すのだが、これといった説明が為されないまま話が進行するため戸惑う。「異世界からやってきた生き別れの実妹と一緒に異世界の化物を駆逐する話」なのは分かるのだが、それ以外の説明が疎か。司狼の困惑を現すためにあえて説明していないのかもしれないけれど、そこは読者には親切であって欲しい。状況説明さえしっかりしていれば、もっと話が盛り上がるなあ、と。

心優しいあまり押しの強い女性陣…主にカレンに振り回される司狼のなんと可哀想なことか。もう少し司狼の話を聞いてやれよ(笑)しかし獣化すると一転、その効果で強気になる司狼は、敵だけでなく女性に対してももっと強気に出る場面があっても良いなあ。カレンにとって望むところになるが。
撫子が化物に乗っ取られていた影響で、恐らく一番楽しめるであろう司狼とカレンと撫子の三角関係が最後まで引き延ばされたのがなあ。最初の方でも言ってるけど、実に勿体無い。好きな流れだけに、そう感じてしまう。