飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「聖王剣と喪われた龍姫I」感想

聖王剣と喪われた龍姫I (ファミ通文庫)

〈あらすじ〉
体内の霊力を使用した兵装〈魔銃〉を駆使し、繁栄を続けるヴァローナ帝国。英雄と讃えられた父を持ち、将来を嘱望されたロジオンは――ある日を境に記憶を失う。彼に残されたのは、拾った指輪と、鮮烈に焼きついた謎の少女の姿だけ。それから二年、無気力に日々を過ごすロジオンの前に、時代遅れの〈宝剣〉を抱えた少女、リーザが現れて……。ロジオンが剣の力を解放した時、世界を揺るがす龍血族の〈神具〉を巡る戦いが幕を開ける!

もしかして今面白い作品を多く生み出しているのはファミ通文庫なのでは、というようなことをTwitterで発言していたらこの作品ですよ。
非常に僕好みのファンタジーでした。王道って、良いですよね。

『領土拡大戦争』において、『魔銃』という名の尋常ならざる武器を使い、版図を広げたヴァローナ帝国。その戦争の英雄と呼ばれる父を持つロジオンは、二年前のある事件を境に記憶を失っていた。心に空虚を抱えながら、帝国軍の学校に幼馴染のグリューネと共に通うロジオンであったが、治安維持のため組織された『特務保安局』に追われる少女リーザと「再会」したことから、世界を巻き込む戦いの渦へと身を投じて行くことになる。

記憶を無くし、「自分」という存在を見失っていた少年ロジオン。魔法のような超常の力を放つことのできる『魔銃』を操る才覚を持つものの、「強者こそ全て」である帝国の考え方に疑問を持ち実際に言葉にしてしまうことから問題児として扱われる。そんな彼に生きる目的を与えることになるのは、虐げられる異種族『龍血族』の美しき少女リーサ。彼女は言葉と感情を失っていて、ロジオンは自分の喪失感を重ねていく。リーサの目的は「龍血族が普通に暮らせる世界」にすること。そのためには力がいる。聖王剣という選ばれた者にしか扱えない強大な力を手にしたロジオンであるが、聖王剣には猛毒といってもいい副作用があった…と、展開を並べていくと、まさに「王道」であり、手堅くきた印象が強い。物語の始まりとして、設定の見せ場と今後、何を目的に主人公たちが動いて行くのかも示しているので、非常に分かりやすい作りである。

ロジオンがなぜリーザを助けようとするのか?
その問いかけに答えは言っているけど、どうにも納得できなかったが、最終的にはリーザの目的が、ロジオンの記憶復活に繋がると知り、そこは解決。あとはどのくらい長い旅路になるのか、だよなあ。グリューネが報われないままだと可哀想なので、彼女の出番は増やして欲しい。聖王剣を持つことが世界の破滅に至ることになるのか、と少ない謎を何処まで膨らまして展開していくのか楽しみではある。